離婚歴のある自営業の39歳女性が「子どもは欲しくない」と自覚し始めたのは小学生のころ。自分の遺伝子を後世に残したくないと漠然と思った。一人っ子で両親との仲は良く、家庭内の問題が関係しているわけではない。なぜそう思ったか、自分でもわからない。両親にとって女性は「かわいい子ども」のままで、「子どもを産まないのか」などと聞かれたこともない。
友人が出産すると、次第に疎遠になる。子どもが嫌い。「可愛い」と無条件になんでも許されるのが腹立たしい。
子どもがいないことでの不利益や生きづらさを感じるのは日常茶飯事。自営業者の集まりに出ると、「ママ起業家」たちが「ママも仕事も両方やってえらい!」ともてはやされる。「子なし」は自分の時間をすべて仕事にそそいでいるのに、それは評価されないのか。会社員時代、「ママ」の同僚が育児休暇や時短勤務で「子なし」にしわ寄せがくるのも納得できなかった。
「ワーキングマザーやイクメンにスポットが当たり、『早く子どもをつくらないと』といった教育が若い人になされているのを見ると、それに乗っかれない自分は取り残された感があります」
子を産まない女が生きるのは無駄で罪と、「子なし」への風当たりがもっと強くなる時代が来るのではないか──。うっすら恐怖めいた不安まで感じる。
最近、養子もいいかなと思い始めた。養子なら遺伝子のつながりがない。9歳前後の聞き分けのいい子が希望。子どもは嫌いだが、育てるのは嫌じゃない。
「隣の芝生は青く見えるじゃないですけど、もっと幸せな人生もあるのでは、という気持ちを捨てきれないのかも」
●胎児の重みで恥骨骨折
「子どもがほしい。協力してくれないなら、別れてください」
2人の娘を持つ女性(54)は、15年前夫に告げた。結婚して10年。男女雇用機会均等法世代で、「子どもを産むのが女の務め」との言葉に耳を塞いで仕事に邁進してきた。ふと気がつくと40歳目前。子宮筋腫がある体と年齢から妊娠のリミットを自覚した時、「努力しないで諦めるか、一歩踏み出すか」と考えるようになった。