「できない理由を言っていても、夢は実現できない。2割でも可能性があるなら、できないと思う8割は捨てて、その2割に集中するのです」
結果、13年は本当に過去最高益を記録し、14年はさらにそれを更新した。テレビの需要が戻ったわけではない。ほかの商品を少しずつ売り伸ばしたのだ。
●妻と決めた営業停止
「糧にした」と言うには苦すぎる「失敗」もしている。04年に発覚した51万人分にも及ぶ顧客情報流出だ。持ち出したとされる元社員2人が、背任容疑で書類送検され、発覚直後から49日間、自主的に営業を停止した。この間の機会損失は、150億円にも上るとされた。
「妻と2時間話し合って『もう閉めよう』と。お客さんの安全を脅かしたのに、『これいいですよ』なんて薦められない」
自ら科した厳しいペナルティーが好意的に受け止められ、翌年には売り上げが回復。「危機管理の手本」などと称賛されたが、本人にその意識はない。
「そもそも問題を起こしたのだから、すばらしい対処法とは言えない。営業停止の後のことなんて、頭になかった」
社員がかかわったとされたことも、「無念だった」。それこそ、共に受注の電話を受けるところから出発。会社の規模が拡大しても社員は家族のつもりだった。
「セキュリティー環境を整えていなかった。私が、十分なことをしていなかったのです」
以来、監視カメラなどセキュリティーにも投資している。
高田さんの「失敗」に対する姿勢は一貫している。
「すべてを受け入れること。そこからしかスタートしない。人のせいには、しないことです」
「成長」は失敗を受け止めることから始まると、実感している。(編集部・鎌田倫子)
※AERA 2016年7月18日号