90年には「タイム」誌にも掲載され、KUMONは瞬く間に世界に広がった(※イメージ写真)
90年には「タイム」誌にも掲載され、KUMONは瞬く間に世界に広がった(※イメージ写真)

 日本で生まれた教育法「公文式」が、アメリカでも信頼を勝ち得ている。

 ニューヨーク・マンハッタンへの進出がブランド力と認知度を高めたという。

 米ニューヨーク、マンハッタン南端の高級住宅街に、KUMON(公文)のバッテリーパークシティー教室はある。

 周囲に多く暮らすのは、世界経済をけん引する金融街ウォールストリートで働くパワーカップル。安全が確保された、子どもを育てるのに最適なこの場所に教室がオープンしたのは、2012年のことだ。

●米誌が「奇跡」と報道

 教室を運営するレズリー・タン先生は、大学で心理学を専攻。子どもに自信と意欲を持たせるKUMONの教育哲学に共鳴した。現在は200人以上の生徒に算数と国語(英語)を教えるが、全生徒と保護者の名前を覚えているという。

「子どもが目覚ましい成長をみせると、やりがいを感じます。3歳からの入会が基本ですが、1歳から問い合わせてくる保護者も少なくありません」

「公文」は1958年に大阪数学研究会として創立された。当時高校の数学教師だった故・公文公氏が、小学生の長男のために手作りした算数の計算問題が公文式教材の原型となった。自学自習形式で、プリントを1枚ずつ仕上げては前進する、手間はかかるが確実な方法だった。これが評判を呼んで教室を開設。いまでは、算数のみならず国語、英語なども含め、国内に1万6300もの教室がある。

 フリーアナウンサーの久保純子さん、コルク社長の佐渡島庸平さん、将棋棋士の羽生善治さん、元サッカー日本代表の宮本恒靖さんなど、「OB・OG」には著名人も多い。

 日本を含む世界49の国と地域に教室を持ち、全教科の学習者総数は約427万人(16年3月現在)に達する。

 ニューヨークでは74年に日本国外で最初の教室が開設されたが、88年にアラバマ州サミトン小学校の正課授業に導入されたことが、アメリカでのブレークスルーとなった。目覚ましい学力の伸びを聞きつけたメディアが「サミトンの奇跡」として取り上げ、たちまち全米で注目を浴びる。90年には「タイム」誌にも掲載され、KUMONは瞬く間に世界に広がった。

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多賀幹子

多賀幹子

お茶の水女子大学文教育学部卒業。東京都生まれ。企業広報誌の編集長を経てジャーナリストに。女性、教育、王室などをテーマに取材。執筆活動のほか、テレビ出演、講演活動などを行う。著書に『英国女王が伝授する70歳からの品格』『親たちの暴走』など

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