K―1GYM EBISU 小比類巻道場
打撃系立ち技格闘技世界最強を決めるトーナメントとして1993年に始まり絶大な人気を誇った、「K―1」。無差別級でピーター・アーツやアンディ・フグなどのスターを輩出し、ミドル級では魔裟斗、が日本人として2度タイトルを獲得。会長の小比類巻貴之(38)は「ミスターストイック」の愛称でその魔裟斗の宿命のライバルとして活躍したトップファイターだ。
恵比寿、代官山、中目黒の各駅のほぼ中間の、東京でも有数のスタイリッシュな場所に道場を構えて2年。強豪プロ選手を多数育成する傍ら、キッズ空手や初心者、フィットネスやダイエット目的の女性も気軽に通えるジムとして、会員180人を突破。各クラスに参加できない多忙な人向けに早朝から深夜までフレックスタイムでパーソナルトレーニングも行っている。昨年12月には福岡・天神にもジムを開設し、6月には小比類巻の故郷、青森県三沢市にも3店舗目がオープンする。
「キックボクシングは消費カロリーの多い有酸素運動で、ストレス発散にもなるし、何より楽しい仲間が作れます。老若男女そういう仲間を全国にいっぱい増やしたいんです」(小比類巻)
(撮影/写真部・加藤夏子)
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 恵比寿や代官山といったスポットに、スタイリッシュな格闘技ジムが増えている。これまでの「痛い」「怖い」といったものからおしゃれにイメージチェンジする格闘技の現場。そのひとつであるK-1GYM EBISU小比類巻道場をたずねた。

「お疲れさまでした」

 色鮮やかなパンプスを履いてジムを後にする美しい女性たち。入れ替わるようにダークスーツのビジネスマンが手早く着替えを済ませ、黙々と拳にバンデージを巻き始める。目に鮮やかな真紅のクッションマットに、天井にはミラーボール。怒号と汗がほとばしる従来のジムとは明らかに異質で現代的な空間だが、小比類巻道場で教えているのは、紛れもなく質の高いキックボクシングだ。

 訪れる人たちも多種多様。華奢で可憐な容姿ながら鋭いパンチとキックのコンビネーションが目を引く福原優さん(31)もそんな一人。ジム近くでネイルや目元ケアも含めた美容室を経営する傍らプロを目指して日々厳しいトレーニングに打ち込んでいる。しかし当初の目的は「体幹を鍛える」ためだった。趣味のサーフィンでなかなか波に立てず、通りがかりに道場の看板を見つけ「これだ」と門を叩いてからまだ2年も経っていない。

 中距離の陸上選手としてインターハイでも好成績を収めた。大学でも陸上を続け、教員やトレーナーになるのかと漠然と考えていた高校卒業時、仲のよい友人に流されるように美容の世界に飛び込んだ。夢中で働き、若くして独立した。キックを始めてから、高校時代に諦めた競技者としての本能が蘇ってきた。

「陸上競技の目標は大会で自己ベストを出すこと。ある意味自分に勝てば達成だけど、格闘技は相手に勝たないと何にもならない。というか、『勝った感』が半端ないんですよ」

 指導する小比類巻さんも「ファイトスタイルも含めて、彼女はプロ向きです。人気選手になりますよ」と太鼓判を押す。

 福原さんの目標はプロ転向後のタイトル奪取だ。

「美容室の経営も一切手を抜かない。30過ぎて死ぬ気でやってます」

(アエラ編集部)

AERA  2016年5月30日号より抜粋

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