「ジョブセンター川口」(埼玉県川口市)は、発達障害を抱えて社会で働こうとする若者への就労支援に特化したセンターだ。全国に先駆けて、就職「後」にも職場へスタッフを派遣して本人と企業との橋渡しを担う「定着支援」に力を注いでいる。

 センター長の加藤正美さんによれば、高校までは特に問題行動もなく大学までスムーズに進学しても、就職の段階で躓く人が多いという。

●離職は5人のみ

 センターを訪ねると、オフィスを再現した一室で会社での業務を体験する「就労訓練」が行われていた。ここに週5日通う男性(24)は、美術系の大学を卒業したものの、就職活動で受けた10社いずれにも落ちた。センターに初めて来た時には自分が発達障害であると知らなかった。通所前に診断を受け、障害者枠で就活している。

 このセンターは、埼玉県が民間業者に委託する事業の一環だ。就職を希望する247人に就労訓練を実施し、これまでに県内3拠点で100人が就職した。離職した人は5人のみにとどまっている。

 一方で、就労「一歩手前」の支援も始まる。おおむね15~25歳の若者を対象にした「みつけばルーム」が6月、東京都世田谷区の国立成育医療研究センターに隣接する施設で開所する。

 もともとは、「せたがや若者サポートステーション」に集う人々の間で、就労の場を求めながらもきっかけがなかなか得られなかった当事者や親たちの居場所づくりのニーズがあった。また、そうした当事者の多くに発達障害の特性が認められた。とはいえ、唐突に「発達障害支援の窓口へ」と橋渡しはしにくい。そこで間口を広げて、生きづらい世の中をサバイブするための場として、2012年に「みつけば!」が誕生した。

●親亡き後見据え支援

 ここで当事者同士によるサポートが発達障害においても有効であると実証され、その姉妹版に当たる今回の「みつけばルーム」の開設に結びついた。ルームには発達障害の当事者がコーディネーターとして常駐する。

 スーパーバイザーを務める尾崎ミオさんは言う。

「対象になる人は、学校になじめない人、集団行動が苦手な人という具合にゆるやかにしました。発達障害の診断はあってもなくてもいいんです。自己認知を促すことにより、誰もが『ゆるサバイバル』できる社会にしていきたい。安心して失敗していってほしいし、居場所を得て自分を見つめるなかで、自分に合った仕事を見つけられたら」

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