「法人税法で、会社の業務に関する支出は、特記事項を除き、ありとあらゆるものを会社の経費で落とせることになっているからです」
食事代やカフェ代からキャバクラ代まで、たとえ1人分であっても、事業に関連すると認められれば「接待交際費」として経費で落とせるという。ただ接待交際費は、中小企業は年800万円まで全額認められるが、大企業は半額までと制限がある。
「コンサート、遊園地、海外旅行などレジャーの経費も、社員が利用した場合は『福利厚生費』として全額経費とすることが可能です」(高橋税理士)
とはいえ、会社がそれを認めるかどうかとなると、話は別。日本労働弁護団常任幹事で横浜法律事務所の佐藤正知弁護士は、こう説明する。
「経費については労働法規に明確な規定がなく、会社員は労働契約や会社の就業規則に従います。そこにも明確な定めがないときは『労務の提供にあたり必要な経費を労働者が立て替え払いする』という黙示の契約がその都度成立していると考えることができる。立て替え払いなので、原則は会社が後で全額負担すべきなのです」
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だが通常、立て替えた経費には会社独自の「精算期限」がある。これについて佐藤弁護士は、期限を過ぎた債権でも、商法の規定により基本的に5年間は請求可能だと言う。
「しかし、経費の提出期限不服を申し立てて争った裁判は過去に恐らくありません。裁判に費用と手間がかかるので、泣き寝入りしているのだと思います」
経費か自腹か。民間サラリーマンは、この境界線をどこに引いているのか。
大手不動産会社に勤務する女性Bさん(43)は、「良心」に従うと話す。