海原:女性によくあるのは120%病。男の人が100やるなら120やらないと認めてもらえないから、120%で頑張って過剰適応になる。「下駄をはかされて管理職になった」なんて言われると、下駄じゃないと証明しなくちゃいけない。

私自身もそうでした。病院で当直のとき、男性ドクターたちは、入院患者がいっぱいだと救急車を断るんです。当然ですよね。手一杯なんだから。私ともう1人の先輩女性ドクターは、過剰適応状態で無理しても救急を全部受け入れていた。

大室:昔はメンタル不調になる職場って、長時間労働で身体的に負荷が大きいブラック企業が多かった。今はコミュニケーションが複雑になって、孤立してしまうような職場が増えている。

阿部:派遣とか協力会社が多くかかわっていると、いろんな立場の人が職場にいる。

海原:人もしょっちゅう入れ替わって、全然誰かわからない。

大室:昔の会社は終身雇用で、家族のように面倒を見るかわりに、ズケズケ本人に対して言った。今は基本的には成果で見て、本人の人格には介入しない。今の上司はパワハラを気にして、「お前のそのコミュニケーションだと嫌われる」「あなたのそういう性格は良くない」なんて言えない。結局、起きた事例だけを注意する。本人はいつまで経ってもコミュニケーションのフォームが変わらない。

海原:会社が教えてくれないなら、仕事をする人自身が、自分の性格傾向や、ものを伝える方法を学ぶ必要がある。自分で自分の傾向を知り対策を考えなければならない時代です。

AERA  2016年2月15日号より抜粋

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