クリスマスなどのイベントシーズンや、新商品発売時期になると、自社商品をどれだけ店舗に並べてもらえるかが勝負。他メーカーは金銭的な取引や年間契約など、違法または違法すれすれの提案をしかけてくる。

 そんなある日。あるスーパーの男性担当者とバックヤードの部屋で2人きりになった。他社が積極的に働きかけをしてきているという話をした後、

「あんたはどうするんだ」

 担当者は顔を近づけて、キスを迫ってきた。機嫌を損ねたらうちの商品を扱ってもらえなくなるかもしれない――。

 頭に、夫や子どもの顔が浮かんだが、すぐに「なんでお前は注文をもらえないんだ」と責める上司の顔にかき消され、目をつぶってしまった。

 支店にいる女性は自分だけ。誰にも相談できずに泣き寝入りするしかなかった。そうするうちに担当者のセクハラはさらにエスカレートし、「枕営業」を強要された。機嫌を損ねないようにやんわり断っていたが、ある日、強引にホテルへ連れ込まれ、関係を持った。

 夜、布団に入っても眠れなくなった。昼間に強い眠気に襲われ、営業車を運転するのが怖い。あの担当者が勤めるスーパーの看板を見るだけで、過呼吸が起きる。営業車の中で抗不安剤を飲んで心を落ち着けた。

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定期面談で上司に言われた言葉