なぜ彼らがそこまでリスペクトされるのか。それは、美食のためには「世界の果て」までも旅をするという、食事にかける情熱あってこそだ。プロの食べ手と作り手が対決する食事のシーンは美しく優雅であるが、どこか格闘技の試合を見ているような、ただならぬ緊張感が伝わってくる。
その一方、一人の客に過ぎないブロガーが、個人の主観を元に料理を批評し、それを無断で拡散することが、本当に世界の料理文化に貢献する行為なのかについても触れられている。
日本を代表して登場する京都の老舗料亭「菊乃井」主人・村田吉弘さんは、日本料理が世界の名だたる料理と並んで取りあげられることは歓迎しながらも、食の批評の世界では料理人の側は異論も反論も一切許されていない場合が多く、全く事実と異なることがネットを通じて流布される場合も多いと嘆く。
「一個人の批評が、店にとってはとてつもない暴力になることを、批評をするブロガーは理解しなければならない。また、その情報に右往左往する食べ手もどうかと思う。料理は自分にとって居心地のよい店が、いちばんいい店なんだと思います」
※AERA 2016年2月1日号より抜粋