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子どもを授かっても授からなくても、夫婦は最後、2人きりになる。楽しみか、恐怖か。あなたの将来は、これからの心がけ次第だ。(ライター・羽根田真智)
結婚した時からずっと、夫だけが好きだった。しかし今、夫を見限ろうと思っている。
PR会社を経営する美佳さん(49、仮名)は、外資系企業に勤務する5歳年上の夫と結婚して23年になる。3年間の不妊治療で授かった、19歳の一人息子がいる。
焦りが出てきたのは、47歳になった頃。手足は冷えているのに顔がのぼせ、顔から汗がダラダラと流れる。初潮以来定期的だった生理がない月がある。
「女が終わってしまう」
好きな仕事をし、望んでいた道を歩んできた。だからか、これまで「女」を突きつけられる場面もなかった。
もともとタンパクだった夫とは、この7~8年セックスレス。同じベッドで寝ているが、なんとなくそういう雰囲気にならないようにと夫が考えている気配が伝わり、美佳さんも夫の体に触れようとしなくなった。
●なぜしてくれないの?
「私は毎日でも夫とくっついていたいタイプ。寂しいけど、穏やかな性格の裏返しなのだから仕方ないと思っていた。セックスがないだけで、仲がいいのは結婚以来変わらずだったので」
ところが「女」を自覚するようになってから、夫にも「男」を求めたいと強く思うようになった。「夫としたい」という欲求が、次第に「なぜ夫は私としたくないのか」という空しさに変わっていった。
思い切って夫に気持ちを打ち明けた。泣きながら「なぜしないの?」と初めて聞いた。
「黙っているだけで、答えは返ってきませんでした」
その時、決めた。50歳になっても状況が変わらなければ離婚しよう。幸いなことに、経済的に自立している。子どもも成人する。夫婦という「基盤」がなくなれば男と女になれるかもしれない。なれなくても、この苦しさからは逃れられるだろう。
リミットまであと1年。最近、美佳さんは気になる人ができた。
「“ずっとしてないけどできるかな”と、付き合ってもいないのに考えてしまう。もう夫のことは同居人としか見ていません」
東邦大学医療センター大森病院女性性機能外来の田中祝江(のりえ)医師は、「要は、コミュニケーション不全の結果」と話す。セックスはコミュニケーションの最たるもの。2人が満足する方向にいっていなければ、問題はセックスだけにとどまらず、夫婦のあり方すべてに及ぶ。
●声高な夫、我慢する妻
55歳の夫が、53歳の妻を伴って田中医師の外来を訪れた。
「これまでは妻も一緒にセックスを楽しんできたのに、最近嫌がるようになった。妻の認知症が心配だ」