三井淳平さん(28)倉庫を兼ねる三井さんのオフィスで。川崎市の老人施設の依頼で、20万ピースを使って伊藤若冲「鳥獣花木図屏風」を制作したこともある(撮影/伊ヶ崎忍)
三井淳平さん(28)
倉庫を兼ねる三井さんのオフィスで。川崎市の老人施設の依頼で、20万ピースを使って伊藤若冲「鳥獣花木図屏風」を制作したこともある(撮影/伊ヶ崎忍)
ホワイトタイガーの胴体は中空。昆虫の外骨格の原理でブロックを組む(撮影/伊ヶ崎忍)
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ホワイトタイガーの胴体は中空。昆虫の外骨格の原理でブロックを組む(撮影/伊ヶ崎忍)

 大人から子どもまで、多くの人を魅了するレゴ(R)ブロック。現在、この地球上に存在するレゴブロックは5千億個を超えると言われる。これらを使って「創造」という行為を楽しみ尽くしている人たちには、どんな世界が見えているのだろうか。

 東京・世田谷のマンションの地下1階にあるオフィス。うずたかく積まれたレゴブロック入りのプラスチックケースに埋もれるように、その人はいた。

 三井淳平さん(28)。日本に1人しかいない、レゴ社が認めたクリエーター「プロビルダー」で、レゴブランドを使ったビジネスを手がける。4月、3年間勤めた大手鉄鋼メーカーを退職して、「三井ブリックスタジオ」を設立。企業などからの依頼に応じて作品を制作している。

 三井さんの代表作がホワイトタイガーだ。全長60センチ、使用したブロックは約5千ピース。面構えも見事だが、目を見張るのは質感ある胴体の造形だ。

「頭のなかで『CTスキャン』を走らせながらブロックを組んでいきました。胴体の真ん中あたりを輪切りにすると、円に近い楕円(だえん)。脚の周囲になると『凹』の字を逆さにしたイメージです。垂直方向だけでなく、水平方向にもCTを動かします」

 そうして分析したイメージを手がかりに、ブロックを積み重ねていく。そこには、三井さんならではのこだわりもある。

「曲線や曲面を作るときも、できるだけ四角いブロックを重ねることで表現したいんです。レゴのものづくりの魅力は、シンプルなブロックを積み上げるところにあると思っています」

 この作業を三井さんは「積分」と表現する。

 ホワイトタイガーの場合、使ったパーツの9割が四角形の基本ブロックだった。ブロックはつるんとした側面は見せず、ポッチのある頂部を表面に向けたのがポイント。そのうえで表面の高さを微妙に変え、肉食獣のしなやかな筋肉を表現したのだ。

AERA 2015年6月29日号より抜粋