一般的に、退職時の貯金目安額は「夫婦で3千万円」といわれる。年金で補えない生活費が年100万とした場合、退職後の30年で3千万円が必要になる。もちろん、家族構成や持ち家かどうかで必要額は違う。だが、貯金をしていても「不惑」にはなれない40代は多い。

 38歳女性と41歳男性の夫婦は1700万円超の貯金を持つが、仕事への不安が尽きない。

 女性は20代のころ教職についたが、体調を崩して退職。当時「女性ひとりで生きていけるように」と、1千万円を目標に貯金を始めた。収入を上げるべく、ある時は公務員を目指し、ある時は日中の仕事に加えて早朝と夜のアルバイトを掛け持つ「トリプルワーク」も経験。ヘルパー2級の資格もとった。

 1千万円を貯め、「無職になってもしばらくは大丈夫」と安心できた。「健康であれば、何かしら仕事はある」という実感も生まれた。だが結婚した今も、「40歳で2千万円」を目標に貯金を続ける。現在は弁護士事務所に勤めるが、小規模で仕事がいつまで続くか分からない。夫もいま体調不良で休業中で、「いつか、支出が収入を上回るのでは」と不安が尽きないという。

 不安を解消するひとつの方法は、そろそろ後半戦に入る人生を再設計することだ。『40代から間に合うマネープラン』の著書をもつ田辺南香さんは、40歳前後で金銭的なシミュレーションを行う意義を説く。

「20代より今後のキャリアが見えやすいから、シミュレーションもしやすい。収入もあと20年続くから、貯金が足りなくてもまだ挽回できる。40代は、未来を変えられる年齢なんです」

 生活に必要な収入はある。若者と違って、100円単位で生活費を削る必要もない。そんな40代にオススメは、貯蓄用口座の活用だ。普段使っている銀行で貯蓄用口座を作り、毎月決まった額が普通口座から自動的に移る仕組みをつくる。自分のお金ながら、普段目にしない場所に隠すだけで貯金は膨らむ。

AERA 2014年11月3日号より抜粋