パーソナルスタイリスト みなみ佳菜さん(42)個人向けのスタイリストとして首都圏を中心に活動。企業向けの研修・講演なども行う。最近は、女性管理職向けの服装指導の依頼も(撮影/鈴木愛子)
パーソナルスタイリスト みなみ佳菜さん(42)
個人向けのスタイリストとして首都圏を中心に活動。企業向けの研修・講演なども行う。最近は、女性管理職向けの服装指導の依頼も(撮影/鈴木愛子)
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 夫との連携でハードな仕事と子育てを両立している、パーソナルスタイリストのみなみ佳菜(42)。多忙な毎日をどう過ごし、またどうやって周囲から仕事の理解を得たのか。

 みなみは一般の個人を対象にした服装のコンサルティングを専門とし、新規予約は2~3カ月待ちという売れっ子。大手商社に勤める3歳年下の夫、37歳で出産した4歳の娘の3人暮らしだ。自宅のリビングは、仕事道具の服を吊るしたラックやトルソー、事務作業用のパソコンに交じって、愛娘「りいちゃん」のために仕立てたドレスや家族写真が飾られ、“ワーク・ライフ・ミックス”の生活空間になっている。

 一般的なワーキングマザーにとって、週末は、平日に注げない分の愛情もたっぷり子どもに注げるチャンスだろう。みなみの場合、仕事柄、週末に依頼が集中することも少なくない。

 平日もほぼ毎日顧客の自宅に出向く。クローゼットの中身を診断して、手持ちの服で可能なコーディネートを提案。「体形が変わって着られなくなった」という服には針を打ってサイズ調整をし、「足に合う靴がない」と悩みを聞けば、専門家を紹介して相談にも立ち会う。その間、メディアの連載や企業研修の打ち合わせもこなす。

 そして、19時に間に合うように保育園に滑り込む。保育園は契約農場の食材を使った給食を昼夕2回提供するところを選んだ。夫は毎日帰宅が0時を回ることがほとんどで、夜はまったく頼れない。「毎日が綱渡り」だ。

 閉園ギリギリに迎えに行くと、りいちゃんはいつも「最後っ子」。それでも満面の笑みで「ママ!」と両手を広げる姿に、毎日毎日ホッとする。りいちゃんは今日一日にあった出来事を話したり、先生の髪を三つ編みにしてみせたりと、なかなか家に帰ろうとしない。でも、みなみは決して「早くしなさい!」とは言わないようにしている。

「私は毎日キャロットケーキを焼いてあげられるような母親にはなれない。一緒にいられる時間が少ないからこそ、私が娘にできることは惜しみたくない。それが『待つ』ということなら、気が済むまで待ってあげたい」

 家に着いたら、寝るまで「べったりとひっついて」過ごす。「りいちゃんは世界で一番大事な宝物」と言葉にして寝かせる。寝息が聞こえてきたら、起き出して翌日の仕事の準備を整え、朝食用のスープを煮込み、パンを準備する。ただし、その朝食を娘と食べる役割は夫。夫にとって、朝は愛娘との貴重な触れ合いの時間。

「私が手を出すとペースを乱してしまうので、私は保育園に向かう2人を見送るだけ。平日の育児は“朝は夫、夜は私”と自然と決まってきました」

 だが、夫婦関係が「うまくいかない時期も長かった」と語る。出産後にパーソナルスタイリストとしての活動を始めた頃は、「君はもうママなんだよ」「なぜそこまでするの?」と夫はみなみの姿勢に反対だった。

「理解を得られるようになったのは、私が腹を決めて本気で打ち込む姿を見せてから。中途半端だと、家族にも伝わらないと気づいたんです。夫が友人に『妻が仕事に対して徹底的にこだわるところを尊敬している』と言っていたと知った時はうれしかったですね」

(文中敬称略)

AERA 2014年11月3日号より抜粋