
ゆるいまいさん宅
自身の暮らしぶりを綴ったコミックエッセイ『わたしのウチには、なんにもない。』が話題に。3巻が4月28日に発売予定(写真部・慎芝賢)


「断捨離」ブームなど、近年「捨てる」生活術にスポットを当てた書籍が注目されている。そこで気になるのは、著者はどんな部屋で生活しているのかということ。実際に訪ねてみた。
ゆるりまいさんのコミックエッセイ『わたしのウチには、なんにもない。』に半信半疑だった。何もなくて生活できるのか。しかも、彼女はイラストレーター。仕事道具だっていっぱいあるのでは。疑問を抱え、仙台市の自宅へ向かった。
リビングへ案内されて目を疑った。テレビとラグ(暖かくなれば撤去)、ダイニングテーブルしかない。さすが自称「捨て変態」。捨てることが大好きなのだ。
「本当はこのダイニングテーブルも捨てたいくらいですが、夫が家族で食事をするのにテーブルは必要だと言うので(笑)」
キッチンにもあまりに何もなくて、つい、お料理しているんですか?と聞いてしまった。
「してますよ。モノがない方が、料理をする時に使う食材を広げられるので楽。それに掃除もとっても楽。手間を省くためにも、何にもないほうがいいんです」
2階の仕事部屋は、机の上にデスクトップのパソコンとデスクライトがあるのみ。愛猫2匹が頻繁に出入りすることもあって、余計なモノは置かない。集中力を高めるためにもがらんとした状態がいいという。
ゆるりさんが「捨てる」快感に覚醒したのは、高校時代の失恋がきっかけだった。思い出の品や写真を捨てたら、意外とスッキリ。つらい記憶を引きずらなかった。
だが、当時は家を仕切る母も祖母も「捨てられない人」だったため、長らく「汚屋敷住まい」が続いた。結婚で新居が決まり、汚屋敷と決別できると思っていた矢先に東日本大震災に襲われた。
壁が「ボッコンボッコン」動くほど家が揺れ、たくさんのモノが降ってきてモノに殺されそうになった。しかも、あれだけモノがあったのに、肝心の懐中電灯や水など必要なものは一切出てこなかった。
「『いらないモノは捨てたい』という気持ちが加速しました」
いま、寝室にベッドしか置かないのも、地震の際、安全に避難できるからだ。
※AERA 2014年3月31日号より抜粋