未受精卵を採取し、液体窒素内で保存する「ガラス化保存法」により、凍結技術の精度が上がった。香川さんは今後、「独身者に寄り添うケアの体制が必要」と話す (撮影/リプロサポートメディカルリサーチセンター提供)
未受精卵を採取し、液体窒素内で保存する「ガラス化保存法」により、凍結技術の精度が上がった。香川さんは今後、「独身者に寄り添うケアの体制が必要」と話す (撮影/リプロサポートメディカルリサーチセンター提供)
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 これまで不妊治療中の既婚女性などに限って認められてきた卵子凍結。これが8月に、健康な独身女性にも認められる方針へと変わった。しかし、この方針は必ずしも少子化改善につながるというわけではないようだ。東京都渋谷区の「はらメディカルクリニック」では2010年から約2年間、独自のガイドラインや倫理委員会を設け、未婚女性の卵子凍結を行ってきた。これまで170人から希望が寄せられ、32人が凍結したが、卵子を解凍、利用した女性は一人もいないという。

 生物学的な出産適齢期と自身の産み時が重なるとは限らない人が増えているいま、凍結容認によって選択肢が増えることを歓迎する人は多い。

 卵子凍結のコーディネートやセミナーなどを行っている、リプロセルフバンクの香川則子所長は言う。

「女性が自分の人生を選ぶ権利を肯定されたことの意味は大きい。今までは(凍結は)既婚者の不妊治療を専門としている医療機関で行われてきたケースが多いが、これをきっかけに一般の婦人科検診を行うような病院でも、独身女性が卵子凍結について気軽に相談できるような広がりがあればいいと思います」

 だが、卵子凍結で本当に産みたいときに産めるのか、そしてそれによって少子化は改善するのだろうか。

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