作家の曽野綾子さんが週刊現代8月31日号に寄稿した内容が注目されている。〈何でも会社のせいにする甘ったれた女子社員たちへ〉というタイトルは女性たちの神経を逆なでした。一方で、男性たちはどう受け止めているのだろうか。
週刊現代は7月、〈「コンプライアンス・タブー」──職場では本当のことは言えないから〉と題して3回シリーズを展開した。初回の「育休から復帰した女子社員に言いたいこと」では、某大手電機メーカー取締役の60代男性がこう話している。
〈大企業で出世したい、でも結婚して子どももほしいというのは、少し都合が良すぎるのではないかと思います。こんなことを会社で言ったら、誰も口をきいてくれなくなるでしょうけど〉
2回目は主に女性の意見を取り上げ、3回目の「女子が女子を叱る」は女性論客3人の座談会。そして今回は曽野さんに「丸投げ」の形。曽野さんが寄稿した「私の違和感」は次のような内容だった。
〈女性は赤ちゃんが生まれたら、いったん退職してもらう。そして、何年か子育てをし、子どもが大きくなったら、また再就職できる道を確保すればいいんです。(中略)会社に迷惑をかけてまで、なぜ女性は会社を辞めたがらないのでしょうか〉
「女の敵は女」という構図に押し込んで「代理戦争」の見物をする人たちを、東レ経営研究所研究部長の渥美由喜さんはこう分析する。
NHKの人気番組「プロジェクトX」が大好きで、自らの過去を過大に美化しているオジサンたち。死にもの狂いで働いてきたが、その価値観が通用しなくなったことに気づいている。
家庭にも地域にも居場所がなく、会社でも先が見え、リストラに怯えている…。
「失ったものの大きさを噛み締めている中年男性にとって、制度の恩恵を受けて仕事も家庭も充実させようとしている女性たちは、自らの立場やアイデンティティーを脅かすようで怖いのでしょう。家庭は妻に任せっきりで会社に守られてきた男性たちのほうがよっぽど『甘ったれ』。自らを正当化したくて断末魔の悲鳴を上げているのです」
大手メーカー勤務で共働きの男性(37)は言う。
「曽野さんのような考え方はもはやトレンドではないし、共感しちゃいけないと思うからこそ、心の奥の奥で拍手してしまう。ドラマ『半沢直樹』が痛快なのと同じで、結局日本人のマインドはモーレツサラリーマンなんですよ。会社という狭い水槽の中でしか生きられない人間が目標や選択肢を失ったら、やることは弱い者いじめしかない。明日は我が身だとヒヤヒヤします」
社会学者の水無田気流さんはこう語る。
「中高年の男性向け雑誌で『異議申し立てする女性』が批判されるのは、わかりやすい仮想敵だからでしょう。根底には日本型雇用慣行の制度疲労や、産業構成比の変化などによる『男性不況』がある。解決のためにも、女性の口を借りるのではなく、男性自身の言葉で正々堂々と討議すべきではないでしょうか」
※AERA 2013年9月2日号