技術やデザインに大きな影響力を持つ国際的な会議「TED」で2009年、広告業界でカリスマ的存在のシンディ・ギャロップ(53)のたった4分間のプレゼンが、拍手喝采を得た。
「私は20代の男性とよくデートして、セックスをします。彼らのセックスは米国にあるハードコアポルノ文化の悪影響を受けています。インターネットで子どもが簡単にポルノを見られる時代になり、ポルノ=セックスだと理解してしまうのは、さらに害悪です。セックスについて再教育とリハビリが必要とされている時代なのです」
ギャロップはそこで、ポルノと実際のセックスの違いについて意見交換する「メイク・ラブ・ノット・ポルノ・コム」(以下MLNP)の立ち上げを発表。セックスというタブーに切り込んだ彼女の闘いが始まった。
今年6月、インタビューに応じたギャロップは今も資金集めに奮闘しているが、MLNPで得た反響は予想以上だったと明かした。世界中の老いも若きも同性愛者からもメールが殺到し、セックスについて相手に言えない悩みや相談、ポルノ文化についての疑問を持ち掛けられている。
といっても、講演に飛び回るだけでは解決はできない。そこで、世界中の人の力を借りようと、今年1月、第2の事業として「メイク・ラブ・ノット・ポルノTV」というレンタルビデオサイトを始めた。仕組みは、あるカップルがセックスしているところを自分たちで撮ったビデオをアップしてもらい、審査した上でオンラインでレンタルするというものだ。利用者はレンタル料5ドルで3週間楽しめる。収入はカップルと同社が折半する。フツーの人のフツーのセックスを見て、「脱ポルノ」を男女が話し合うきっかけにしてほしい、というのが狙いだ。
※AERA 2013年7月8日号