帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など多数の著書がある
帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など多数の著書がある
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人智学を創始した哲学者・教育者のルドルフ・シュタイナー (c)朝日新聞社
人智学を創始した哲学者・教育者のルドルフ・シュタイナー (c)朝日新聞社

 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは「わからないをよしとする」。

【写真】人智学を創始した哲学者・教育者のルドルフ・シュタイナー

*  *  *

(1)人間の生命についてはわからないことばかり
(2)わからないが前提だと不思議も受け入れられる
(3)不思議を受け入れて世界を広げよう

 長年、医師をやってきましたが、人間の生命についてはわからないことばかりです。わかっているのは、体全体のうち足の底からせいぜいくるぶしぐらいまでだろうと思います。

 西洋医学のように人間をバラバラに分解して、それぞれの役割を考えていくという方法であれば、わかった気になれるのですが、これでは人間をまるごととらえることになりません。それぞれの臓器が体全体の中で相互にどのように働いているかを知るには、中国医学では前提となっている気の存在が必要になってきます。

 つまり目に見えない生命エネルギーの流れのようなものを考えないといけないのです。

 先日、書きましたが(12月13日号)、この生命エネルギーの流れやネットワークを説明するには、生命場の考え方が必要になります。といっても、電場や磁場が目に見えないように、生命場も目に見えません。それどころか、いまだに科学的にはっきりと測定できていないのです。

 しかし私は、科学の進歩によって、いずれ気や生命場の存在が証明されるようになると考えています。

 冒頭に書きましたが、生命についてわかっているのは、たかだかくるぶしぐらいまでです。わからないということを前提にして生命に向き合っていかないと、何もできなくなってしまいます。科学的証明を求めるよりは、目の前で展開される現象を素直に認めていくべきだと思っています。

 わからないということを前提にすると、身の回りに起こる不思議な出来事も受け入れられます。

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