政治資金規正法では、収支報告書の不記載、虚偽記載に対する罰則は5年以下の禁錮または100万円以下の罰金だ。この場合、後援会の会計責任者ばかりでなく、共謀の事実があれば、安倍首相自身も罪に問われることになる。
しかも、ホテルニューオータニの広報担当者によれば、立食形式のパーティーは「1人1万1千円」が基本だから、参加費の5千円では足らずに事務所側が負担している疑いが持たれている。安倍首相は否定しているが、ここにきて新たな“説”も浮上している。山下弁護士が語る。
「最近言われているのは、ニューオータニに国の行事などで使われた会場費を水増し請求させ、差額をプール金としてためていたのではないかという疑惑です。前夜祭の不足分も、このプール金からホテル側に支払われたのではないかという見立てです」
前例がある。2001年に発覚した外務省をめぐる公金流用事件では、実際にこの手口が用いられた。舞台はホテルニューオータニ。1995年のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の際、外務省の課長補佐らは会場費を水増し請求させ、その差額をホテル側にプールしていた。そのプール金を外務省の急な会議や宿泊に使おうとしただけではなく、飲食代など私的な交友費にも流用していた事件だ。
果たして、前夜祭での不足分もプール金で補填(ほてん)していた可能性はあるのだろうか。元外務省情報局長の孫崎享氏はこう言う。
「あり得る話です。ホテルとしてはトータルで赤字にならなければいいわけで、裏金のような形でプールするのが慣行化しているのかもしれません。外務省の事件以降、ホテルオークラや帝国ホテルなどは会計の処理を厳格化し、明細書なども長期間保存するようになったと聞きますが……」
ニューオータニでは、10月に即位礼正殿の儀で、皇室を招いて安倍首相夫妻主催の晩餐(ばんさん)会が開かれたばかりだ。山下弁護士が続ける。
「本来、プール金は国に返還されるべきお金ですから、もし前夜祭に流用されていたとしたら背任の罪に問われます。その場合、ホテル側も共犯になります」