前出の市村広報部長は「従来の大学のランクにとらわれず、国際系の学部ならばランクが一つ下の大学でもそこを選ぶというのはよくあります」という。
その一例が、立命館・国際関係と同志社・文とのW合格のデータだ。関西私大の雄といえば同志社大で、関関同立(関西大、関西学院大、同志社大、立命館大)のグループから頭一つ抜けているといわれているが、33%が立命館・国際関係を選んだ。
立命館大は14年に文部科学省から大学の国際化をけん引する「スーパーグローバル大学」に指定された。国際関係学部ではアメリカン大学と共同でジョイント・ディグリー・プログラム(国際連携学科)を18年につくった。日本で2年間、アメリカで2年間学び、卒業時には両大学共同の学位を取得することができる。アメリカン大学からも学生が留学。大学全体でも留学提携先は増えており、世界34カ国・地域、158大学・機関から選択することができる。
国際連携学科に入学した新垣瀬莉奈さん(20)は、高校時代に1年間の留学を経験し、海外で学ぶには1年では足りないと考えていた。他大学は視野に入れず、一本勝負で受験した。
「偏差値の高い大学はほかにもあるが、自分のやりたいことはここにしかないと思った。アメリカン大学からの留学生と一緒に授業を受けることで、現地の大学でどういった能力が必要なのか気づくようになった。授業は大変ですが、日々充実しています」(新垣さん)
さらに、同じ国際系学部でも、大学の特色の違いを踏まえて選択するケースも出てきた。早稲田・国際教養と東京外国語・国際社会とのW合格で早稲田を選ぶ学生や、関西学院・国際と同志社・グローバル・コミュニケーションとのW合格で、関西学院を選択するケースなどだ。
関西学院・国際の担当者は「コミュニケーションだけではなく、経済・経営系の学問にも力を入れているのが強み」と見る。今の時代は英語ができることが珍しくなくなってきている。そうなると、語学にプラスしてどんなスキルを持っているかも問われてくる。
「他の学部の授業を受けられる制度もあり、学生は文学や政治学も学べる。同じキャンパスに文系の主な学部があることで、多様な選択肢を用意できているのが好評を得ている。頑張れば4年間で二つの学部を卒業できる制度もあり、一生懸命学ぶ学生もいます」(関西学院・国際の担当者)
今回の国際系学部のW合格のデータは、学ぶ内容がより重視される傾向が如実に表れたといえる。予備校ではこんな指導も。
「グローバルなコミュニケーション力や国際感覚など、多くの国際系学部で実力をつけることができるようになっています。希望する上位の大学に入れなくとも『大学に行ってから逆転できる』と生徒を送り出せる」(市村広報部長)
W合格の入学比率は、一部の受験者の選択に基づくあくまで参考情報の一つに過ぎない。かつてのように偏差値やブランド力など一つの物差しで大学を選ぶ時代ではなくなった。多様な選択肢があるので、自分の将来設計に合った大学を選んでほしい。
(本誌・吉崎洋夫)
※週刊朝日 2019年11月29日号