それから十回以上はトイレに行っただろうか、十二時をすぎたころ、便器に出た液体が薄い黄色になった。固形物はない。マスクのナースに確認してもらうと、やっとのことで検査の許可が出た。
がしかし、わたしは呼ばれなかった。午後一時、午後二時──。ほかの三人はとっくに検査を済ませて帰っている。さすがにおかしいと思い、マスクのナースに訊くと、S先生が遅れている、といった。
「それって、遅刻ということですよね」「はい……」
ムカッとしたが、我慢した。「それならそうと、なんでもっと早(は)ようにいうてくれんのですか。S先生のほかにも内視鏡の担当医はいるんでしょ」「はい、消化器内科の医長がいます」「出すもんをみんな出したあげくに、はいそうですかと帰るわけにはいかん。その先生に検査をしてくれるようにいうてください」
そんなこんなで大腸内視鏡検査は終了し、家に帰ったのは午後四時だった。尻を洗おうとズボンを脱いだところを、めざとく見つけたよめはんが、
「ピヨコちゃん、なんでパンツ穿(は)いてへんの」「捨てました。病院で」「また、お漏らししたんやね」「またやない。たまに、です」「ほんまにもう、締まりがないんやから」「ありがとうございます」「ちゃんときれいに洗うんやで、お尻」「がってん承知です」
ポリープはふたつとった。いま病理検査をしている。
※週刊朝日 2019年11月1日号