福井県高浜町の森山栄治元助役(故人)から3億2千万円もの金品を受領した問題で、八木誠会長、岩根茂樹社長ら6人が辞任に追い込まれた。朝日新聞によると、関電が高浜町に寄付した約44億円のうち、35億円超は森山元助役が在任中の10年間に集中していたという。
関電の現役社員はこう嘆く。
「会社にクレームの電話、メールがすごい数に上っています。外の現場で仕事している作業員は『金返せ』と文句を言われるなど大変ですよ。死人に口なしで森山元助役が悪いんだと言わんばかりの記者会見を幹部らがやったのが、逆効果だった。持ちつ持たれつという悪しき関係です。延命を図ろうと言い訳してますます傷口を深くした」
社員が言う、「持ちつ持たれつ」という関電と森山元助役の関係性を示す極秘の捜査資料を筆者は入手した。
案件は関電の高浜原発を舞台にした恐喝事件だ。2008年8月、高浜原発の警備犬の訓練委託業務を巡り、大阪府警は、警備犬訓練会社の元社長Aさんと元役員Bさんを恐喝容疑で逮捕した。高浜原発のK副所長から150万円を脅し取った容疑だった。AさんとBさんは裁判で執行猶予付き有罪判決が確定後、ぶ厚いその捜査資料を持って筆者の取材に応じたのだ。
Aさんは1999年から関西電力と契約を締結し、原発警備のために警備犬の訓練飼育業務を受託していた。当時はMOX燃料を使用するプルサーマル計画が検討されていた。
だが、北朝鮮が潜水艦で韓国領内を侵犯するなど原発へのテロ行どを危惧する声があがっていた時期でもあった。
<警備犬を配置して不法侵入の未然の防止><MOX燃料受け入れ時の警備の一助として活用>などと契約書には記されている。
当時の高浜原発の警備は、全国の原発で警備業務を一括で請け負っていた「原子力防護システム」が元請けで、その下に森山元助役が株主、役員を務めていた警備会社「オーイング」が入っていた。そこにAさんの警備犬業務が加えられた。