森山元助役と高浜原発のK副所長との件で話し合ったのはAさん、Bさんの代理人Xさんだ。筆者が代理人Xさんを取材すると、最初に森山元助役と会ったのは、京都府舞鶴市のホテルの喫茶店だったという。

 代理人Xさんによると、森山元助役はオーイングの名刺を手渡しながら、「関西電力に頼まれて、代わりにきました」「穏便に解決したいと関西電力からも言われている」と関電の「名代」だと強調したという。

 当時、Aさん、Bさんは警備犬とK副所長の今井町長襲撃計画をマスコミに売り込み、報道させようと水面下で動いていた。森山元助役は代理人Xさんいこう要請した。

「2人を止めてほしい。マスコミにネタを売るとか、ビラをまくとか、やめてくれないか」

「いろいろ文句があるのはわかる。私が関電との間に入るのでゲタを預けてくれないか。関電はなんとでもなる」

 そして、森山元助役はこう続けた。

「手ぶらだとか、そういうことはない」「あとは、下請けに入ってもらえるようにする。適当な会社を作って、やってもらえれば何とかします。関電にはこちらから、話をしますから」

 2人の代理人Xさんは、森山元助役について関電の「フィクサー」のような存在かと感じたという。

 その後も森山元助役とは2度、面会。最終的に話し合いは決裂し、刑事事件ヘと発展した。代理人Xさんは森山元助役が雑談の中で発した言葉を今も鮮明に記憶している。

「私が助役をやっていた時、何もない町が立派になったのは関電、原発のおかげです。それゆえ私も、信頼を得ています。原発で町は潤っている。もちろん、関電にお返しもしっかりしています。持ちつ持たれつですね。それで信用が築かれた」

 今回の3億2千万円の金品提供を示唆するような話だった。交渉が決裂した後も、代理人Xさんには様々なルートから森山助役、関電の情報がもたらされるようになった。

「森山さんや吉田開発など高浜原発の業者が、関電の特定の幹部に現金などでキックバックしていると情報を得たていました。京都の国税の関係者に詳しく、伝えた。関電が公表しているのは、金沢の税局が税務調査した3億2千万円。しかし、私の得た情報では、その数倍くらいの金額だった。まだ関西電力は隠蔽しているのではないか」(代理人Xさん)

 森山元助役と関電幹部らの闇は想像以上、根が深いようだ。(今西憲之)

※週刊朝日オンライン限定記事

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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