MGC男子の41キロ付近、ゴールに向かう(手前から)中村匠吾、大迫傑、服部勇馬 (c)朝日新聞社
MGC男子の41キロ付近、ゴールに向かう(手前から)中村匠吾、大迫傑、服部勇馬 (c)朝日新聞社
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ゴール後、駒大の大八木弘明監督(右)らと喜ぶ中村匠吾(中央) (c)朝日新聞社
ゴール後、駒大の大八木弘明監督(右)らと喜ぶ中村匠吾(中央) (c)朝日新聞社

 2020年東京五輪で活躍が期待される選手を紹介する連載「2020の肖像」。第3回は、男子マラソン中村匠吾(27)。9月15日に開催されたマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)を2時間11分28秒で制した。陸上では2020年東京五輪代表に内定した最初の一人となった。1992年バルセロナ五輪で銀メダルを獲得した森下広一を最後に表彰台に上がっていない男子マラソン。復活のキーマンに名乗りを上げた。朝日新聞社スポーツ部の堀川貴弘氏が中村のこれまでの歩みから強さの秘密に迫る。

【写真】ゴール後、駒大の大八木弘明監督らと喜ぶ中村匠吾

*  *  *

 MGCの翌日は雨だった。その日誕生日を迎えた中村は、こう言った。

「今日がレースでなくて良かったかもしれない。天候にも恵まれたのかな」

 暑くなれ。もっと暑くなれ。

 MGC当日、スタートラインについた中村はそう思った。中村だけではない。所属先の富士通の福嶋正監督も、大学卒業後も指導を受ける駒大の大八木弘明監督も。

 午前9時前のスタート時に26.5度だった気温は、レース終了時には28.8度まで上がっていた。そして中村は大迫傑(28)=ナイキ=との熾烈なラストスパート勝負を制し、最後に追い上げて2位に入った服部勇馬(25)=トヨタ自動車=とともに五輪代表に内定した。

 レース後、中村は語った。

「今日は、そこまで暑さは感じなかった。汗もそんなにかかなかった」

 こわもての大八木監督の目に涙があった。

「25年間、駒大陸上部から1人はオリンピック選手を出したいという思いでやってきましたから」

 もともと発汗量が少ない。体温が上がりにくく、体内の水分のほか、ナトリウムやカリウムといったミネラルも体外に流出しにくい。中村はこう話した。

「夏のレースや練習では大崩れしたことがないし、毎年だいたい8、9月に体のピークを持っていけます。自信を持ってスタートラインに立てたのもプラス材料でした」

 MGCでは、スタート前とフィニッシュ後の体重がほとんど変わらなかった。給水もうまくいった証拠だ。

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