「筋肉は裏切らない」、2018年の流行語大賞にノミネートされたこのフレーズを生んだのが、NHK「みんなで筋肉体操」。番組で指導を行うのが、発達し切った逆三角形の上半身を持つ谷本道哉先生。作家・林真理子さんとの対談では、現在のトレーニング環境に憂慮する声も。
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林:私、ダボダボの二の腕に何とか筋肉をつけたいと思って、ユーチューブで見つけた、タオルを持って「イチ、ニ」って動かすトレーニングをやってるんですけど、ぜんぜん効果がないんです。
谷本:それはどんな動きですか。
林:タオルの両端を握って外向きに引っ張って、手を上げたり下げたりするんです。
谷本:力の方向には全く動いていないので、力学的仕事から見ると止まっている運動と同じですね。
林:どういうことですか?
谷本:つまり重りを上げ下げせずに、重りを持ってじっと耐えるのと同じ運動ということです。実は筋肉の発達には上げる運動と下ろす運動が大事。これは+と-の力学的仕事量から説明できるのですが……。
林:なんか難しいですが、要は筋肉をつける大事な上げ下げの動きがないということですか?
谷本:そうです。だからあまり効果的な筋トレとは言えないと……。
林:そ、そうなんですか。ひどいじゃないですか、ユーチューブのトレーニング。
谷本:残念ですが、あまり効果的でない方法はいっぱいありますよ。たとえば床に肘をついて腕立て伏せの姿勢で耐える体幹トレーニングがすごくはやってますよね。体幹の安定性の意識づけには効果がありそうですが、上げ下げの動きはゼロ。だから、実は筋肉はあまりつきません。けっこうキツいんですけどね。
林:ほんとですか。
谷本:生理学的にみると、あまり効果的とはいえない不可思議なものが少なくないのが現状です。やり方次第では「筋肉は裏切ります」よ。また今は、「ラクして変われる」的なものも本屋さんにいっぱい並んでますよね。
林:「たった5分でラクラクやせる」みたいな。