林:なるほど。

谷本:筋肉体操では、そんな筋トレに取り組む姿勢を意識して声掛けをしています。たとえば、「筋トレでキツくなったときは、頑張るか・超頑張るかの二択で考えてください」などなど……。

林:ある人が「これを持ち上げないと娘が下敷きになってしまうんだ」という必死の思いでバーベルを持ち上げると言っていました。

谷本:気の持ちようで変わります。環境省が「ナッジ・ユニット」という組織をつくってるんですけど、聞かれたことあります?

林:いえ、ないです。

谷本:「ナッジ」というのは、「そっと後押しする」という意味で、たとえば歩いたら音がするような装置を階段につけると、エスカレーターに乗らずに階段を歩く人が増えるとか、男性用のトイレに的が描いてあると、そこに当てようとするからトイレを汚さないとか、人を望ましい行動に後押しすることを行動経済学で「ナッジ」というんです。

林:知りませんでした。

谷本:環境省は省エネとか健康増進のために「ナッジ」を進めていこうとしてるんですけど、僕、なぜだかその委員になってるんです。「あと5秒しかできません!」といった筋肉体操での前向きすぎる声掛けが「ナッジだ」ということ、そして「筋トレ以外の生き方にもつながる」と環境省から評価いただいて。

林:へぇ~、そうなんですか。

谷本:筋肉体操で言えば、「キツくてもツラくない・キツくても楽しい!」「もっと出し切ってもいいですよ!」など。確かに声掛けが後押ししている部分はありますよね。気をよくして『筋肉体操語録』という本も書きました。

林:先生は「キツいけど楽しい」を目指してらっしゃるんですか。

谷本:そうですね。僕はゴルフをやらないんですけど、ゴルフ好きのお父さんの姿勢は「キツくてもツラくない」の典型だと思うんです。6時起きでコースに出たりしますが「あした起きるのツラいな」なんて思いませんし、打ちっぱなしで「あと200球も打たなきゃいけない」って憂鬱になる人もいません。そういう気持ちで何にでも取り組めるのが理想だと思うんです。

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