アニメ界の多くの至宝が失われた──。
平成以降、最悪のテロとなった「京アニ放火殺人」。海外からも評価の高い日本のアニメ界の悲劇は、世界でも大きく報じられた。理不尽にも命を奪われた犠牲者を悼み、現場には多くの人が訪れている。容疑者にどんな動機があろうとも、絶対に許されない。
41歳の男による惨劇は、もはや鬼畜の所業というほかない。
京都市伏見区のアニメ制作会社「京都アニメーション(京アニ)」のスタジオ入り口に、青葉真司容疑者が侵入したのは7月18日午前10時半ごろである。
「死ね!」
青葉容疑者がそう叫びながらガソリンを1階にまき、ライターで火をつけると、瞬く間に炎が燃え広がり、スタジオの鉄筋コンクリート造り3階建てビルは火炎に包まれた。
その後の惨状は報道されているとおり、20日までに34人の死亡が確認され、重軽傷者は30人を超えた。
近隣住人の一人は唇を震わせてこう言った。
「もう地獄を見ているのかと思った……」
この惨劇を引き起こした青葉容疑者とは何者なのか。19日にあった京都府警の会見によると、全身にやけどを負い、病院に搬送された青葉容疑者は、「麻酔で眠っている状態」で意識がないという。警察も詳しい話を聴けていないといい、「住所・職業不詳」という以外、本人の情報はほとんど出ていない。
息子が青葉容疑者と一時期、同じ埼玉県内の中学校に通っていたという夫婦はこう話す。
「わかっているのは、(青葉容疑者は)地元の小学校を卒業後、地元の公立中学校へ行きました。そこからどこかへ転校されているようです。息子は同じ中学校に入って卒業しているけど、(青葉容疑者のことは)『全く記憶にない』と話していました」
その後の青葉容疑者の詳しい経歴はわからないが、この男が数年前に、特異な行動を起こしていたことがわかった。
青葉容疑者は過去に、茨城県内の雇用促進住宅に住んでいたことがある。低い賃金の非正規労働者や無職の人たち向けの低家賃の住宅だ。