──以前に比べて、ここは良くなった、という点は? 芸術性が増したとの声も。
いや、それはないです(笑)。ただある意味、円くなったというか。開き直ってはいけないんですが、できなくても仕方ないよな、というような。ありのままを受け入れられる自分がいます。
──高橋さんの再チャレンジする姿に、ファンだけでなく、すごく勇気づけられた、という一般の方も多いようです。
そう思って頂けているのであれば、とてもありがたいです。今回のチャレンジは、若いときとは違います。昔と同じ結果は到底望めない、諦めからの挑戦です。自分を冷静に見て、どう頑張ってもトップにいけないのは、悔しいけれどわかっているんです。でも、そんな中でも、自分なりの目標だったり、表現だったりを探しながら、総合で1位2位ではなく、自分なりのこだわりのところでてっぺんを目指せれば。
──頂(いただき)が一つではなくてたくさん見えるんですね。
だからいま、本当に純粋に、スケートをしていて楽しいです。今までは目標の頂点が一つしかなかったのが、あっちにもこっちにも(頂点が)見えてきて。どこまでいけるかわからないけど、チャレンジしてもいいんじゃないかという気持ちです。
──結果を求めないとのことでしたが、昨年末の全日本選手権で2位でした。
2番は冷静に考えて、できすぎです(笑)。いや、謙遜とかではなくて、本当にそう思っています。まったく想像していなかった。冷静に判断して、頑張って4位か5位でベストかな、と思っていました。実際、羽生(結弦)君が出ていたら、3位ですしね。(田中)刑事(24)も(友野)一希(21)も(山本)草太君(19)も、若い選手はどんどん成長してきているので、次のシーズンでどうその若手と戦えるか楽しみです。
──3月の世界選手権は出場する権利があるのに、辞退しました。後輩に道を譲ったんでしょうか?
そんなかっこつけたものではなくて、後輩に出てほしいというのは、後付けです。僕自身、世界選手権に出る覚悟が持てなかった。もともと全日本選手権4、5位と思っていた人間です。世界選手権に出て結果が残せるかというと、それほど甘くないのは、経験してよくわかっていましたから。だったらトップを目指している人、これからもっと上にいきたい人が出るほうがいいと思って。僕が行くよりは、後輩のほうが得るものが大きいのではないか、ということですね。