林:へぇ~。
角野:そしたら編集の方はびっくりされて、「帰って相談してきます」って。そのとき私、「ほうきに乗ってラジオを聞きながら飛ぶ魔女の話を書きたいの」ということを言ったんです。それが実現したというわけですね。
林:角野さんは今、読み聞かせもしてらっしゃるんですね。
角野:ええ。私からお願いして、鎌倉文学館で月に1回させていただいてるんです。
林:まあ、なんてぜいたくな。
角野:私も楽しいんです。子どもって正直でしょ。おもしろいのよね。毎回来てくださる常連のお子さんもいるし、「退屈?」「退屈~っ」なんて言う子もいるし、寝ちゃう子もいるし(笑)。
林:アハハハ。角野さんは、大学は早稲田に行って、恋愛結婚してブラジルに行って、ご主人と世界中を回って日本に帰ってこられて、そのあとご自分の好きな道を歩まれたわけでしょう。この年齢の方にしてはめずらしい人生ですよね。
角野:悪くない人生だったと思います。戦争が終わったとき小学5年生だったの。中学になって、今まで使っちゃいけなかった英語を習い始めたわけですよ。そのときに「be動詞+動詞ing」、つまり現在進行形というのを習って、「これで生きよう」と思ったの。現在進行形って素晴らしい、自由でなければなんにも生まれないと思ったんです。そういう気持ちはずっとあります。わがままなんですよね、一方で言えば。
林:大学を卒業してから、新宿の紀伊國屋書店に就職なさったんですね。田辺茂一さんが社長のころですか。
角野:そう。いい人でしたよ。お誕生日になると自分のお好きな本を1冊選んで、田辺さんがそれをくださいました。
林:紀伊國屋ホールもまだないころですよね。
角野:ええ。そのころの紀伊國屋は木造の2階建てで、場所は今のところに、小さなお店がいくつか並んでいて、その奥にあったの。1階が和書で、2階はギャラリー風のつくりで洋書。で、そこから1階を見渡せるの。すごーくいい建物でした。