『魔女の宅急便』をはじめ、200作以上の作品を生み出してきた角野栄子さん。昨年は児童文学のノーベル賞とも呼ばれる「国際アンデルセン賞」を受賞し、世界的な注目を集めました。角野さんの創作秘話から日々の生活まで、作家の林真理子さんがたっぷり伺いました。
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角野:『魔女の宅急便』を書き始めたのは49歳のときで、本になったのは50歳のときです。雑誌に1年間連載して、それが本になったら意外と評判がよくて、4年後に映画になったんです。
林:ジブリの映画ですね。最初に見たとき、作者としてどうでした?
角野:「あれ?」と思いました。鈴木(敏夫)さんというプロデューサーが「宮崎駿という人は、あまり原作を使わないので有名だからね」って言うので、そのつもりでいましたけど、私は「タイトルと名前は変えないでください」「世界を変えないでください」とだけ申し上げたんです。だけど、お話の筋がちょっと違うのでびっくりしました。私はもう少し可愛いラブストーリーになるかと思ってたんです。
林:私は、映画と原作との幸せな結婚で、世界が広がっているような気がしました。
角野:ええ、私もそう思います。映画を見てから原作を読む方がすごく多くて、それはそれでよかったと思います。
林:最近、女性誌なんかが角野さんのファッションとかライフスタイルとかに注目して、特集を組んだりしてますよね。「なんであんなにおきれいなの?」「なんであんなに素敵なの?」って。
角野:私、おしゃれは小さいときから好きで、下駄の鼻緒からこだわってました。鼻緒が切れると下駄屋さんに行ってすげ替えるでしょ。「これがいい」とか言って選ぶんですよ。子どもに選ばせてくれるのは下駄の鼻緒とごはん茶碗。姉が持ってるのがうらやましくなったりして、選びに選んで。
林:お洋服もいつも素敵ですね。オーダーなさってるんですか。
角野:生地だけ変えて、いつも同じ形でつくってもらうんです。と言っても、私は戦時中の子どもですから、ぜいたくができないんです。今日のこの洋服もつくってもらったんですけど、生地は千円しないんですよ。