

年を取り、独り暮らしに不安を感じるようになったなら、家族の世話になるのが一般的だった。だが配偶者とは離婚や死別、子どもは遠くに住んでいるなど、頼りづらい人も増えてきている。そこで注目されているのが家族以外の人との“シェア生活”だ。その暮らしをルポした。
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一口にシニアのシェア生活といっても、「グループリビング」「異世代ホームシェア」など、さまざまな形態がある。筆者も現在はバツイチ独身、49歳。将来悲惨な孤独死なんてことにならないため、いったいどんなシェア生活のスタイルがあるのか、調べてみた。
まず紹介するのは、シニア同士でシェア生活をする「グループリビング」だ。シニア向けの住宅としては、「サービス付き高齢者向け住宅」(サ高住)が知られている。こちらは設置基準が法律で決められており、高齢者が医療、介護などのケアを受けるための住宅といえる。
一方グループリビングは、法律など制度に基づくものではない。「自立と共生」を理念として、独立した生活に不安を抱えるシニアが集まり、助け合って暮らすことを目指す。こうした理念を共有する「グループリビング運営協議会」には、全国の20ほどの住まいを運営する法人が所属している。
グループリビングの草分け的存在が、NPO法人COCO湘南だ。同法人は神奈川県藤沢市で、「COCO湘南台」(1999年開設)、「COCOたかくら」を運営している。
今回の取材では、2006年開設のCOCOたかくらを訪ねた。2階建て約500平方メートルのうち、半分は食堂、談話スペース、浴室などの共有部分が占める。個人の居室は約25平方メートルでトイレ、ミニキッチン付き。入居分担金として370万円、夕食の食費、家賃、家事契約費などで月12万9千円がかかる。
「自立と共生」を掲げるだけあって、COCOたかくらの運営は民主的だ。月1回、入居者にNPOのスタッフも加わったミーティングが開催される。ここで行事の内容や日々の生活での相談、ルールづくりなどが話し合われる。
入居者は思い思いに、自由で自立した生活を楽しんでいる。COCOたかくらに9年住む田中八重子さん(87)は、ここに来る前、東京都羽村市の老人ホームに夫と入っていた。
だが「鎌倉に多く住む友人たちと会いにくい」と、単身COCOたかくらに移ってきた。