前号の本コラムで、日米通商交渉の結論は、今夏の参議院選挙後まで持ち越されると予測した。今回は、その勝敗予測をしてみよう。
米国は、日本を裏切ってTPP(環太平洋パートナーシップ協定)から一方的に離脱した。米側がTPPに戻らないまま関税交渉をしたいと言うなら、日本は、少なくとも何か見返りを要求するのが筋だが、何も取らないまま、交渉入りをただ取りされた。出だしでいきなりの敗北だ。
次に、米国は日本の鉄鋼・アルミ製品に一方的に関税上乗せをした。EUは、WTOに提訴し、米国産バーボンやオートバイなどに報復関税をかけたが、日本は何もせず、唯々諾々と米側に従っている。日本は交渉入りの条件としてこの撤廃を獲得すべきだったが、できなかった。これで2敗。
さらに、昨年の日米首脳会談で合意された共同声明では、日本側は、TPP水準を超える農産物関税引き下げはしない意向を示したが、これは、事実上、TPP水準までなら下げると譲歩したに等しい。交渉前から大幅譲歩を約束するなど聞いたことがない。
これで3敗。
また、TPPでは、日本の乗用車などへの米国の関税を撤廃することになっていた。TPP並みの農産物の関税引き下げを認めるなら、米国の乗用車関税撤廃を認めさせるべきだったが、これもできず。4敗。
しかも、共同声明では、「交渉結果が米国の自動車産業の製造及び雇用の増加を目指す」という文言も入り、逆に米国の自動車産業のためになる投資拡大などを事実上約束してしまった。これでは、日本の自動車メーカーは踏んだり蹴ったりだ。ここまでで5敗。
これらの「負け」を今後の交渉で挽回できるかと言えば、まず無理。つまり、「日本の大敗」は決まったようなものだ。
ここで二つ目の予測だ。大敗にもかかわらず、国民の多くはそれに気づかない可能性がある。その理由は、安倍官邸が、今から入念なスピンコントロール(情報操作)を行っているからだ。最近の報道を見ると、その効果が既に表れている。