現在65歳の年金受給開始年齢が、引き上げられる可能性は高い。70歳以上の医療費の自己負担の増加なども見込まれる。法政大学の小黒一正教授(公共経済学)は、社会保障が切り捨てられていく時代がやってくるという。

「令和の時代には、財政再建の先送りが不可能となり、社会保障の抜本改革に追い込まれる確率が高い。消費税20%程度では足らず、医療費の自己負担増や年金受給開始年齢の75歳までの引き上げなど、痛みを伴う改革が行われそうです」

 生活が苦しくなり頼れる人のいない高齢者にとって、最後のセーフティーネットが生活保護。15年は高齢者の100人に3人が生活保護を受給している。小黒教授は、生活保護対象になるような貧困状態の高齢者が40年には100人中4.6人、180万人になる可能性があるという。

「必要な財源が確保できなければ、保護基準が厳しくなりそうです」

 AIは生活の様相を大きく変える。20年には自動運転のタクシーやバスが実用化され、30年ごろには人間のような知的作業をこなせるAIが出てくるとされる。人手不足を解消してくれる面もあるが、サトシの父のように仕事を奪われる人も。

 三菱総合研究所によると、AIによって30年までに500万人の新たな雇用が生まれる一方で、740万人の雇用が奪われる。差し引き240万人が職を失うことになる。米シンクタンクのマッキンゼー・グローバル・インスティテュートの推計では30年までに最大で2700万人、全労働者の半数が転職を余儀なくされるという。

 三菱総研の白戸智主席研究員はこう見る。

「30年以降にAIの普及が進み、サラリーマンなど中間層の失業が社会問題になっていくでしょう。新しい社会に対応できない人の所得は低下し、二極化が進むと見られます」

(本誌・吉崎洋夫、池田正史)

週刊朝日  2019年5月24日号より抜粋

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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