「今年は明らかに女子と多浪生の合格が増えました。また男女とも、不合格からの繰り上げも含み、繰り上げ合格者が増えています」
全国に27校を展開する医学部専門予備校のメディカルラボでも、合格者を前年と比べると、女子は1.2倍、多浪生は1.4倍ほど増えた。本部教務統括の可児良友さんは、「女子や多浪生への不公平な扱いが少なくなり、公平性が高まったと思います」と話す。
繰り上げ合格者の数が増えた理由をこう推測する。
「昨年までのデータが当てにならないので、現役や1浪の男子が不安感から例年より受験校の数を増やしたのではないでしょうか。再来年から大学入学共通テストが導入されるので、その前に確実に合格しようと、男女とも成績上位層が受験校数を増やしたことも関係したと思います。国公立大の志願者も、複数の私立大に併願している事例が目立ちました」(可児さん)
医学部予備校メディカでも、5浪の男女をはじめ複数の多浪生が合格した。
「諦めずに頑張ってきた生徒が報われる入試となりました。女子の合格も増え、差別がなくなったように思います。例年より私立の受験校を増やし、10校以上受ける生徒も多かった。3月下旬の繰り上げ合格ラッシュはほとんどが女子で、昨年までは考えられない現象でした」(亀井孝祥代表)
また、ある有名進学校出身で15年以上浪人した卒業生が合格した例もある。
「今後別の形で差別が復活する懸念はありますが、今年度の入試は前年度に比べて公正なものになったと思います」(進学校の教諭)
繰り上げ合格は国公立大でも出ている。前出の石原さんは、私立を選ぶ理由をこう解説する。
「富裕層の家庭では、地方の国公立と自宅から通える私立の両方に合格すると、後者を選ぶケースが増えているからです。首都圏では、国際医療福祉大、順天堂大、慶應義塾大など比較的学費が安いところもあります。私立でも通わせるサラリーマン家庭もいます」
目指す人にとって今はチャンスだ。
「18歳人口は減少しているのに、医学部の入学定員はこの10年で1800人ぐらい増えました。景気回復に伴い、理系よりも文系の人気が高まっています。諦めずにチャレンジしましょう」(石原さん)
もちろん合格してからも気は抜けない。多浪生については、これまで留年しやすく国家試験にも受かりにくいとの見方があった。入試が見直されつかんだチャンスを生かせるのか、今後真価が問われるので、勉学に励んでほしい。(庄村敦子)
※週刊朝日 2019年4月26日号