SNSで「売文で糊口をしのぐ大センセイ」と呼ばれるノンフィクション作家・山田清機さんの『週刊朝日』連載、『大センセイの大魂嘆(だいこんたん)!』。今回のテーマは「学級会民主主義」。
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小学校、中学校時代、学級委員をやらされることが多かった。いや、やらされたというのはちょっとウソで、当然自分がやるものだと思っていたという方が正確だ。だから推薦を受けると、「ふむ」という感じで引き受けていたのである。
そんな、相当に傲慢で自信満々の大センセイであったが、なぜか会議の司会進行が苦手であった。
小学校五年生の時のこと、五年生と六年生の学級委員が全員集まって会議をする、学年委員会の副議長に選出されたことがあった。
会議の席上ある生徒が、
「冬の朝礼は寒いから、教室に入る前に体を温める方法をみんなで考えてほしい」
という議題を提出した。
常識のある司会者なら、「厚着でもするしかないな」と先に結論を考えて、そういう方向へ議論を誘導したのかもしれない。しかし、大センセイはピュアで真面目であるから、一直線に議論を深めていったのである。すると、ある生徒がこんな提案をした。
「教室に入る前に、校庭を何周か走れば体が温まるんじゃないでしょうか」
「賛成!」
「さんせーい!」
過半数の生徒が手を挙げた。こうして、校庭周回体温上昇案が賛成多数で可決されたのであった。
そして迎えた朝礼の日。校長先生の話が終わり、全校生徒が校庭を走ることになったのだが、ルートも段取りも決めていなかったから、校庭はてんやわんやのぐっちゃぐちゃ。校庭周回体温上昇案は、たった一度のトライアルで廃案となってしまったのだった。
オブザーバー役の教師から、古い木の椅子の処分を考えてほしいという議題が出されたこともあった。
大人だったら「産廃業者に来てもらう」でお終いだと思うが、なんせ司会者は真面目でピュアな大センセイである。またしても、一直線に議論を深めていった。