


年を追うごとに特殊詐欺による被害が深刻化してきている。左ページを見てもわかるように、昨年の特殊詐欺の認知件数は1万6493件。このうち65歳以上の高齢者の被害の認知件数はなんと1万2867件と、全体の78%を占めている。
警察庁によると高齢者の被害割合が多い手口はやはりオレオレ詐欺が圧倒的に多い。電話などを利用し親族、警察官、弁護士、金融機関職員等を装い、言葉巧みに被害者をだます。そして現金やキャッシュカードを受け取る役目の「受け子」がやって来てだまし取るという悪質な詐欺である。4月1日の新元号発表後は各地で、改元に乗じたウソによってキャッシュカード等がだまし取られないよう、より強い注意喚起が行われている。
また、還付金詐欺も高齢者の被害割合が多い手口だ。税務署などをかたり、税金の還付等に必要な手続きを装って被害者にATMを操作させる。そしてお金が戻ってくるどころか逆に加害者側が用意した口座にお金を振り込ませてしまうのだ。
実は2月中旬過ぎ、私の家の固定電話にも不審な電話がかかってきた。土曜日の午後1時半。相手は市役所職員だという。
「あの、医療費明細はすでにお手元に届いていますよねー」
土曜に市役所から電話?すでに奇妙なにおいがする。しかし相手は間髪入れずに言葉を畳みかけてくる。
「届いてますよね!」
「はあ」
「ですよねー。で、その中に返送用の封筒が入っていたと思うんですが、まだそれがこちらに届いていないんですよ」
返送用の封筒? そんなものが医療費明細と共に送られてきたことは、ただの一度もない。私は即座に家人に確認をした。当然のことながら家にそんなものは来ていない。
「うちには医療費明細も返送用封筒も来ていませんよ」
「そうですかあ。じゃ、再度送らせていただきますね」
「ちょっと。あなたのお名前をいただけませんか」
「保険課のカトウです。では失礼いたします」
何というか、全体的に軽いトーク。しかし相手の妙に自信満々に話を進めていこうとする強引さは際立っていた。「ひょっとして、こちらに非があるのか」と、ほんの一瞬、不安な気持ちにもなる。