「自分がしっかりしているうちに、自分の基準で施設を選んでおくといい。必要に迫られて、あわててどこかの施設に入居する例も多いですが、その場合、紹介された施設の中からとりあえず空いているところを選ぶケースが目立つ。そんな選び方では、本当に自分に合う施設に出会える確率は低くなります。自分が希望を持てる施設に出会えるように、早めに見学してみましょう」(同)

 また、親も子も心に留めておきたいのは「自分にとって安心な場所は変わる」ということだ。少し前まで、施設に入りたくないと言っていた親が逆に施設入居を希望し始めることもあれば、その逆もある。

 例えば、夫に先立たれ、自分もがんを患っていたある高齢女性。夫の思い出が詰まった家で、最期まで過ごしたいと強く希望していたが、病を抱えて一人でいることに、自分でも無意識のうちに不安感を募らせるようになった。度々、ケアマネジャーの元に緊急コールが入るようになったことから、施設でのショートステイを勧められ、試しに施設で過ごしてみたところ、これまでにない大きな安心感に包まれたという。何かがあったときに、すぐに診てくれる人がいるという安心感は、気づけば夫の思い出が詰まった家で過ごす快適さをはるかに上回っていた。

「自分にとっての安心感というのは、その時々で変わります。それと同様に、自分に合ったすみかも、その時々の状況で変わる。例えば3年前と今、3年後とで意思が変わっても、それは当然のこと。さらに最期は家で、と願う人が多い一方で、無意識のうちに、“家にいること”自体を頑張りすぎている人もいます。そうしたことを理解しておくと、施設入居の大きな判断材料の一つになります」(同)

 最後に、施設を考える際に避けて通れないのがお金の話。施設にはさまざまな種類があり、自立している人が対象の施設から、要介護状態の人が対象の介護施設まで幅広くある。『親の介護は9割逃げよ』の著書などで知られる、介護に詳しいファイナンシャルプランナーの黒田尚子さんは言う。

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