今、「下の毛」を脱毛する中高年が増えている。いつか介護を受ける日に備え、キレイでお世話されやすい下半身にしておきたい、との思いからだ。若きも老いも脱毛の時代。痛くないのか? 本当に必要なのか? アラフォー世代の女性記者もやってみた。
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医療脱毛専門のリゼクリニックによると、この2~3年で45歳以上の来院者が急増し、過去8年で15倍以上に増えたという。同クリニック新宿院の大地まさ代院長は、その背景についてこう話す。
「この世代ではとくにVIO脱毛のニーズが高い。親の介護を経験して、自分のときに介護者に迷惑をかけたくないと脱毛に踏み切る方が増えています」
「V」「I」「O」は、女性の局部の形から名づけられているようだ。Vはいわゆるビキニライン、前から見える逆三角形の部分を指す。Iは女性器周辺、Oは肛門周辺で、まとめてアンダーヘアともいわれる。
将来的に介護を受ける身になった際、脱毛しておくほうがよいのか。
「陰部は排泄物やおりものなどで汚れやすいのに、皮膚の形状が入り組んでいるうえ、太い毛が密集しています。きれいに拭いたつもりでも、汚れが残りやすい部分です。年をとると免疫力が落ちやすく、雑菌が繁殖すると感染症や膣炎の原因にもなります。脱毛すると、毛がない分、清潔に保ちやすくなるメリットがあります」(大地院長)
医療法人理事を務める中村英理さん(61)も、介護脱毛を決心した一人。亡き父を自ら1年間介護した経験をこう振り返る。
「排泄の後、便が毛にこびりついて、なかなか取れないんです。何度も拭き取ろうとすると痛がるので、完全にキレイにしてあげられないこともありました。赤ちゃんみたいにつるんと拭き取れたら、お互いラクで気持ちがいいのに。何度そう思ったか、わかりません」
中村さんは父を見送った後、都内の医療脱毛クリニックで、陰部と肛門周りの毛、いわゆるVIO脱毛を受けた。
「もし自分が将来介護を受ける身になったら、お世話してくれる人の負担を軽くして、私自身もなるべく清潔に過ごしたい。そのためには、アンダーヘアは邪魔なんです。脱毛してしまうと思いのほか快適で、もっと早くしておけばよかったと思うほどです」(中村さん)