反対咬合の外科治療として知られる「顎切り手術」は顎を切断して短くし、骨格を変える大がかりなものです。

 重度の糖尿病や心臓病、脳の病気のために血液をサラサラにする薬を服用し、手術の際に病気の管理が必要な患者さんもいます。このような場合、内科などが併設されていて、医師がいる大学病院に紹介します。

 このような話をすると、

「じゃあ、むし歯や歯周病など、一般的な治療も大学病院で受けるほうがいい治療が受けられるの?」

 というギモンが湧いてくるでしょう。でも、それはちょっと違います。

 日本では歯科医師といえば歯科医院で働くものであり、実に85%以上を占めます。そしてこのうちの多くが開業しています。こうした歯科医師の中には各分野の専門を極めている人がたくさんいます。歯学部を出た後、大学病院に残らなくても専門分野を学べる仕組みができているからです。もちろん、歯科医院の数が多い分、スキルのある歯科医師を探すのは難しいですが、患者さんが求めれば、相応の歯科医師に必ず、出会えます。

 なお、大学病院には高度な医療機器があり、そこが一般の歯科医院に比べいい点だという人がいますが、それは一昔前の話。かつては大学病院にしかなかった歯科用CTも、現在は多くの歯科医院が持っており、ハード面での不足はまず、ありません。

 大学病院には臨床、研究、教育の三つを担当する教授や准教授など常勤の職員のほかにも、さまざまな立場の歯科医師が働いています。

 歯学部を卒業して1年目の研修医、博士の学位取得をめざす大学院生(4年間学費を払って院生をやるが、学位取得後は大学に残って職員を目指すことが多い)、研究はやらずに専門知識を学ぶため、授業料を払って臨床を勉強する専修科生(何年いてもよく、自信がついたら開業する)などです。

 つまり、勉強中の歯科医師もたくさんいるわけで、皆さんが受診した場合、若い研修医が治療を担当する(指導医の管理のもと)可能性もあります。

 こうしたことを理解したうえで、一般の歯科医院と大学病院をうまく使い分けるのが得策ではないでしょうか。

○若林健史(わかばやし・けんじ) 歯科医師。医療法人社団真健会(若林歯科医院、オーラルケアクリニック青山)理事長。1982年、日本大学松戸歯学部卒業。89年、東京都渋谷区代官山にて開業。2014年、代官山から恵比寿南に移転。日本大学客員教授、日本歯周病学会理事を務める。歯周病専門医・指導医として、歯科医師向けや一般市民向けの講演多数。テレビCMにも出演

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