歯科も医科と同じように付属の大学病院がありますが、果たして、一般の歯科医院と何がどう違うのか、気になるところです。どのような患者が大学病院にかかるべきなのでしょうか? また、一般の歯科医院と治療の質に違いはあるのでしょうか? テレビなどでおなじみの歯周病専門医、若林健史歯科医師に疑問をぶつけてみました。
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日本歯科医学会ホームページによると、2019年3月現在、全国に歯科大学や大学の歯学部付属病院(以下、大学病院)は37あります。80以上ある医学部付属病院と違い、なじみがない人のほうが多いでしょう。
大学病院には実に多くの外来が設置されています。
例えば私の出身大学である日本大学松戸歯学部付属病院には、むし歯を治療する「保存科」や入れ歯やブリッジなどを専門とする「補綴(ほてつ)科」「歯周科」や「小児歯科」「矯正歯科」など、一般的な科がすべてそろっています。
一方で「特殊歯科」や「麻酔・全身管理科」「顎(がく)顔面機能再建科」「スポーツ健康歯科」など、珍しい名前の外来もあります。特殊歯科は知的障害や認知症など、一般の歯科受診が難しい人に治療をおこなう科で、麻酔・全身管理科は障害のある人や緊張しやすい人が口腔外科で手術を行う場合に全身麻酔や精神を落ち着かせる鎮静法をおこなう科です。
この連載でたびたび出てくる「口腔外科」も、一番の活躍の場は大学病院です。親知らずや唇、舌や顎(あご)などの手術も手がけます。こうした大きな外科手術をおこなうため、大学病院には本格的な手術室があり、入院できる病棟もあります。
大学病院は予約をすれば誰でも治療を受けることができます。医科のように「紹介状がない人が受診する場合の費用」は発生しません。
しかし、実際には歯科医院からの紹介で受診をすることが多くなります。
一番多いのはおそらく「親知らず」でしょう。歯が真っすぐに上を向いているものは一般の歯科医院で対応できますが、歯ぐきの中に埋まっていたり、横や下を向いている場合は歯ぐきを切開して骨を削る処置が必要で、出血や痛みの管理が必要です。
歯根の病巣が原因で起こっている上顎洞炎(じょうがくどうえん、上顎の粘膜が炎症を起こしている)や骨格の問題で起こっている反対咬合(こうごう、受け口)なども、紹介するケースが多いですね。