――自然体で嫌みがなく、普通のように見えて記憶に残る存在。小野寺はそんな役をどのように演じているのだろうか。
それはドラマでデビューしたころ「映像は演技をやりすぎちゃだめなんだ、自然でいるのが一番だ」と教えられた経験からきているかもしれません。
「太陽にほえろ!」の半年前にやったドラマ「むらさき心中」で、僕は渡辺美佐子さん演じる奥さんと不倫をする若者を演じたんです。相手は大女優さんだし、監督もベテラン。僕は緊張でガチガチで、完璧に台本を覚えて撮影に行った。そうしたら監督に「小野寺! なにやってんだ! 芝居なんかするな! 自分のままでいるだけでいいんだ!」って怒鳴られた。「役者なのに芝居をするなってどういうことだろう?」と困りました。
でもアフレコのときに自分の映像を見て「なるほど」と思ったんです。たしかに監督の言うとおり、自分のままにしているほうが自然で、「いかにもこういう青年いるな」と思わせる。そうか舞台と違って映像ってやりすぎてはいけないんだな、と学んだ。それがいまでも僕の演技のベースになっているんです。
役者を辞めようとか休もうと思ったことは全くないですね。「太陽にほえろ!」の後もNHKの「御宿かわせみ」など、いい作品に出させていただいた。いまは船越英一郎さんが2時間ドラマの帝王と言われてますけど、当時は僕も主役で年間5、6本はやっていましたよ。映像も舞台もどっちも好きです。バラエティーは苦手ですけれどね。
――2007年から大阪芸術大学短期大学部で教鞭を執り、12年からメディア・芸術学科長に就任。後進を指導する立場になった。
本当は教えるなんて苦手だったんです。人の上に立って何かするタイプじゃないし、「自分は若い人にああだこうだ言うのはやめよう」と思って、あまり言ってこなかった。
きっかけは大阪芸術大学がテレビ局と産学協同で作ったテレビドラマでした。そこに役者として参加したんです。学生さんと共演したんだけど、どうも目がきょろきょろしてて落ち着かない。もちろん彼としては本物の役者相手にやりづらかったんでしょう。でも、やらなきゃいけない。