それで「君、このセリフはすごく大事だから、しっかりオレの顔見て言わないとだめだよ」とか、アドバイスをしたんです。劇団時代に裏方の経験もありますから「ケガをするから、乱雑な現場を片付けよう」とかも言いました。そういったことが理事長に伝わって「短大に新しく作る演劇コースに教授として来てもらえないか」と。
ええ!?と思ったけど、まあ数年なら、とお引き受けした。ところが途中で前の学科長が亡くなられて、「小野寺さんしかいない!」と言われてしまって断れなくて、結局12年間務めました。
今年で学科長は退きましたけど、いまも週に1回、2コマだけ教えているんです。若い人と一緒にやるのは楽しいし、自分が18、19歳のときには経験できなかったこと、もしあのとき俳優座に受かっていればたぶんこういうことをやっていたんだろう、ということを学生たちにやらせてるんです。自分もそのなかで疑似体験しながら、また学んでいるのかな。
学生から「もっと厳しくしてください」と言われることもあるんですよ。優しすぎる、って。でも僕はピリピリしながら授業をするのいやだし、芝居は基本的に楽しくやらなきゃ、いいものは演じられないと思ってる。それがいいかどうかはわからないですけど、これが僕のやり方ですから。
(聞き手・中村千晶)
※週刊朝日 2019年4月5日号