ある日、メイクさんに「あなたすごいじゃない。カット割りにピッタリハマってるのよね」ってほめられました。「そうですか、ありがとうございます」って言ったけど、実はそういうことをしていたんです(笑)。
――「パンとあこがれ」で認められ、1972年にスタートした「太陽にほえろ!」にレギュラー出演。端正な顔立ちに気品と優しさをまとった刑事“殿下”役で大人気となる。
「パンとあこがれ」の後、木下恵介さんの「冬の雲」に近藤正臣さんと小倉一郎さんと3人で新人として出ることになった。小倉さんは母性本能をくすぐるようなかわいい男の子、近藤さんはちょっと悪っぽい、ニヒルな男性。僕は優しくて、物静かで誠実な男の子。雑誌の「明星」や「平凡」に「あなたは3人のなかで誰が好き?」なんてアンケートに載ったりしました。番組はすごく評判になって、それが終わったとたんに「太陽にほえろ!」の出演話がきたんです。
あれは国民的ドラマでしたからね。いまでもいろんな人に「殿下」って呼ばれますよ(笑)。
新宿で走り回ってロケをして、お昼に食事に行くにも、とても一人では行けない。ワーッ!とみんなが寄ってきて取り囲まれちゃうんですよ。スタッフさんにガードしてもらいながら食事に行ったりね。街を歩くのも大変で、気づかれないように下を向いて歩いていると「あー、意識してる!」なんて言われる。外に出るのがいやになって、ほとんど出なくなりました。
僕はね、どちらかというと個性の強くない役柄が多いんです。「太陽にほえろ!」も全員が濃いキャラですよね。僕が中学時代から憧れていた石原裕次郎さんをはじめ、“マカロニ”役の萩原健一さん、“ゴリさん”の竜雷太さん、“山さん”の露口茂さん──僕はそのなかでは、あまり個性が強くない。「冬の雲」の3人のなかでも、僕はどこにでもいる、普通のお兄さんタイプの役だった。そういうキャラクターでずっとやってきたんです。