苦いような甘いような…なんとも複雑な味のする漢方薬。漢方薬は苦いほど体にいいのか、漢方薬の効果を損なわずにおいしく飲める方法はあるのか…。週刊朝日ムック「家族ではじめる本格漢方2019」では、漢方専門医に取材しました。
* * *
漢方と聞くと、「体によくて苦いもの」というイメージを持つ人は少なくないでしょう。「良薬口に苦し」という言葉もあるように、口当たりの悪い薬ほど体に良さそうなイメージがあります。
しかし、「効果と味は全く関係ありません。漢方薬がすべて苦いわけではありませんよ」と話すのは、入江漢方内科クリニック吉祥寺の院長を務める入江祥史医師。
1つの成分でできている西洋薬と違い、漢方薬はさまざまな成分を持つ生薬がブレンドされています。そのため、何種類もの生薬の味が混ざり、複雑な味になります。味覚は人により違うため、ある人が苦いという漢方薬をおいしいと感じる人もいるのです。
漢方薬は、大きく2つの種類に分けられます。生薬を煎じてそのまま飲む煎じ薬と、生薬の煎じ薬を濃縮させて粉末にした乾燥エキス剤です。煎じ薬はエキス剤よりも生薬の味が強くなるので、苦いものだとより苦さを感じます。
■苦手な味でも大丈夫!効果を落とさず飲みやすく
漢方エキス剤の飲み方として、入江医師は次のような方法を勧めます。
「シートやカプセルの形をした『オブラート』を使うのがスタンダードな飲み方でしょう。最近では、漢方薬専用のゼリーも出ています」
シートは、エキス剤を包んで飲み込みます。カプセルは自分でエキス剤の粉を中に詰めて飲みます。どちらも薬局で手に入ります。
「味を変えたいなら、砂糖やジャム、ハチミツと混ぜて食べる方法もあります。実際、ハチミツで練って作られた八味丸という漢方薬もあります」(入江医師)
砂糖やハチミツでは薬の効果は変わりませんが、薬を飲む度に糖分を摂ることになるので注意が必要です。
抹茶粉末やインスタントコーヒー、ココアなどと混ぜて飲むという方法もありますが、味ごまかしているだけでエキス剤の味が消えることはありません。また、コーヒーなどの成分が漢方薬の成分と反応して効果が落ちる可能性もあります。エキス剤には、錠剤やカプセル剤になっているものもあるので、薬剤師や医師に相談するのもひとつの手でしょう。
煎じ薬は、どうしても飲めなければ専門医に相談して効果が似た別の生薬に変えられる場合もあります。
◯入江漢方内科クリニック吉祥寺院長
入江祥史(いりえよしふみ)医師
1991年、大阪大学医学部医学科卒業。大阪大学病院で内科医研修後、ハーバード大学で漢方薬の研究を行う。その後、慶應義塾大学病院漢方クリニック医長、証クリニック吉祥寺で院長を務め、自身のクリニックを開院。日本内科学会認定総合内科専門医、日本東洋医学会認定漢方専門医。
(文/濱田ももこ)
※週刊朝日ムック「家族ではじめる本格漢方2019」から