減少幅が目立ったのは一橋大で、前年比92%。特に社会学部は前年比78%になっているが、前年に大きく増加した反動とみられる。

 東北大は前年比94%で、法学部、経済学部、文学部など多くの学部で10%以上の減少。昨年大きく志願者を集めたことに加え、AO入試の募集を増やし、一般入試を減らしたことで、志願者が減ったようだ。

 次に公立大の志願状況に目を向けてみよう。今年は富山県立大・看護学部、兵庫県立大・社会情報科学部、新見公立大・健康科学部などが新設・改組され、人気を集めた。前・後・中期日程の志願倍率上位を見ると、地域経営系や、医療健康系、情報系の学部が人気だ。

 倍率上位の大学は3教科以下の受験が目立つ。例えば、前期日程で最も高い志願倍率となった北九州市立大・地域創生学群は、2科目から受験でき、国語のほか、外国語、地歴・公民、数学、理科のいずれかの科目を選択するだけでいい。

「センター試験は国語や英語の平均点アップが目立った。なので、これを活かせる文系3教科型の入試方式などがある公立大に志願者が集まった。私大志願者も受けられるため、安全志向の受け皿にもなっています」(石原さん)

 定員厳格化の影響を受ける私大の人気の指標となるセンター利用入試の志願状況を見てみよう。東進ハイスクールを運営するナガセの市村秀二広報部長は今年の傾向についてこう語る。

「ここ数年の私大難化による安全志向で受験生の併願数が増え、合格チャンス拡大の手段としてセンター型入試が利用されている。その中で難化した大学を敬遠したり、倍率が低い大学に志願が集まったりする傾向が強まっています」

 確かに関東の大学を見ると、人気私大の志願者減少が目につく。トップの東洋大は前年比93.7%で大きく減少。明治大は90%、立教大は96.6%、法政大は98.8%にとどまった。安全志向で敬遠されたとみられる。

 最も減らしたのは明治学院大で、前年比81.5%だった。昨年は2割強も志願者を増やしたが、その分が減った形だ。入試担当者はこう説明する。

「センター利用入試は、願書を出すだけで合否が出るので、前年の倍率を見て、受かりそうな大学に出願する受験生が多い。ここ数年は特に大きく変動していると感じる」

 昨年、アメリカンフットボール部の悪質タックル問題を巡る対応で世間から批判を浴びた日本大は、前年比で82.8%と大きく減らした。ある私大の入試担当者は「穴場として志願者数を維持する見方もあったが、受験生らの見る目は甘くなかった。人気を取り戻すのはしばらく難しいのでは」と話す。

 そんな中、大きく増えたのは早稲田大で前年比112.7%。商学部で45.5%、法学部で30%、政治経済学部で15.9%増えるなど、看板学部で大きな増加が目立ち、大学通信の安田賢治常務は「地方の国公立大志願者の併願先となったのでは」と分析する。中央大は多くの学部・学科で志願者を減らしたが、今年、新設される国際経営学部と国際情報学部が志願者を獲得し、前年比107.8%と、全体では増加した。青山学院大は前年比108.2%だった。昨年、志願者を減らした反動とみられる。

 中堅私大を見ると、武蔵野大は前年比212.4%だった。データサイエンス学部などを新設したほか、入試広報にも力を入れ、志願者を獲得したようだ。その他にも成蹊大が131.5%、専修大が124.7%などと伸ばした。

 理系の大学でも大きく伸びている。東京理科大は前年比114.9%、芝浦工業大は127.5%、東京都市大は116%などだった。この現象について、前出の安田さんは、

「文高理低の傾向は変わらないが、情報系の学部・学科がかなり人気を集め、それに釣られて理工系全体が人気を盛り返している印象を受けます」

 と解説する。

 関西ではくっきりと明暗が分かれた。同志社大、関西大、近畿大、京都産業大が大きく志願者数を伸ばした一方で、立命館大は前年比98.3%、関西学院大は94.2%と大きく減らした。両大学とも前年に合格者数を厳しく絞ったことが影響したとみられる。

 私大入試は中盤に差し掛かり、国公立大の前期日程が2月25日からに迫る。安全志向が「吉」と出ることを願いたい。(本誌・吉崎洋夫)

週刊朝日  2019年2月22日号

著者プロフィールを見る
吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

吉崎洋夫の記事一覧はこちら