第二の人生を歩む元貴ノ岩 (c)朝日新聞社
第二の人生を歩む元貴ノ岩 (c)朝日新聞社
モンゴルに学校を設立し、土俵までつくって相撲を教える元横綱日馬富士 (c)朝日新聞社
モンゴルに学校を設立し、土俵までつくって相撲を教える元横綱日馬富士 (c)朝日新聞社
弟子の断髪式に姿を見せることはなかった元貴乃花親方 (c)朝日新聞社
弟子の断髪式に姿を見せることはなかった元貴乃花親方 (c)朝日新聞社

 付け人に暴力を振るった問題の責任を取って、現役を引退したモンゴル出身の元幕内力士・貴ノ岩(28)の断髪式が2月2日、両国国技館で開かれた。横綱白鵬らモンゴル人力士や元貴乃花部屋の弟子たちなど350人が集まったが、ひときわ目を引いたのが、スーツ姿の元横綱日馬富士(34)だろう。元貴ノ岩の頭部にけがを負わせる暴力を振るって角界を去っただけに、土俵で大銀杏にはさみを入れると、大きなどよめきが起きた。

【モンゴルに学校を設立し、相撲を教える元横綱日馬富士に、断髪式に姿を見せなかった元貴乃花親方】

 あんな騒動を起こした二人が、まるで何もなかったかのように親しく振る舞う様子に、多くの相撲ファンは驚いたかもしれない。

 日馬富士を12年間応援してきた、広島県の蓮華院金剛寺の木原秀成住職がその舞台裏を感慨深げにこう話した。

「2~3日前にも、日馬富士から連絡が来ました。先月、東京の赤坂の料亭で、日馬富士は貴ノ岩と和解し、貴ノ岩の断髪式に出席する運びとなった。あの男(日馬富士)は竹を割ったような性格ですから、貴ノ岩との件についても、(遺恨は)何もないと話していました」

 2017年10月、秋巡業中に鳥取市内のラウンジで起きた暴行事件は、モンゴル人力士たちの飲み会で勃発した。元日馬富士は元貴ノ岩の頭をカラオケのリモコンなどで数回たたいてけがを負わせ、その責任を取って横綱を引退した。

「あの時は横綱の白鵬をかばい、かわいさ余って憎さ百倍となり、その瞬間にたたいてしまったんでしょう。あれから相撲人生が一変してしまった」(木原住職)

 元日馬富士は傷害罪で略式起訴され、昨年1月、50万円の略式命令を受けた。元貴ノ岩は昨年10月、元日馬富士に対し、暴行事件がなければ見込まれた給料や治療費、慰謝料など2413万円の損害賠償を求めて民事訴訟を起こしたが、1カ月もたたないうちに取り下げた。その後、被害者だった貴ノ岩は冬巡業で付け人に暴力を振るい、加害者の立場に逆転し、昨年12月、引退に追い込まれたのは皮肉な話だ。

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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