歯を毎日きちんと磨き、歯医者にも定期的に通っているのに、歯周病の進行が止まらない……。こうしたケースは珍しくなく、特にタバコを吸っている人にありがちなのだとか。なぜタバコを吸っている人は歯周病になりやすいのでしょうか。そのほかにも歯周病になりやすい要因はあるのでしょうか? テレビなどでおなじみの歯周病専門医、若林健史歯科医師に疑問をぶつけてみました。
【口が臭いと言われる回数が増えたら歯周病かも!? セルフチェック表はこちら】
* * *
歯周病の一番の原因は歯周病菌。でも、これだけではありません。なりやすさ、悪化のしやすさには患者さんの免疫力(歯周病菌を抑えるからだの力)、生活環境などが影響しています。例えば、心理的ストレスや睡眠不足でからだが疲れ、免疫力が低下すると、歯周病が急速に悪化することがあります。中年女性の患者さんでは、親の介護などが始まって、ストレスが続くと歯周病が悪くなる人が多いですね。
こうしたなか、今回、詳しく取り上げるタバコは生活習慣に関連する代表的な歯周病の悪化要因です。
喫煙者には歯周病が多いといわれますが、実際、そうですね。歯周病が悪くなるリスクはそうでない人の5~8倍高いこともわかっています。
ではなぜタバコを吸っていると歯周病になりやすいのでしょうか。
そのキーワードはずばり、「歯ぐき」にあります。タバコを吸っている人の歯ぐきは黒ずんでおり、硬く、水分不足で乾いた状態になっています。これはタバコの主成分の一つであるニコチンの強力な血管収縮作用によるもの。歯ぐきに血液や栄養がいきわたらないため、このようになってしまうのです。
さらにヘビースモーカーの人では口の中が常にタバコの煙でいぶされているような状態です。これはいわば歯ぐきを燻製(スモーク)にしているようなもの。木のチップでいぶすのと違い、多くの有害物質が含まれるタバコの煙でいぶされることが問題です。
実際、喫煙者の歯ぐきは防御反応が働きにくいことが知られています。例えば歯周病の比較的初期からあらわれる歯ぐきの腫れは歯周病菌を取り除こうとするからだの防御反応。からだが病原菌を殺す白血球を患部に運ぶために血流を増やし、血管を広げているので、赤く腫れるのです。