出口に向かいかけた人たちが驚いて、小走りで宮殿前に戻り出すと、警察らが「けが人が出ることを、天皇陛下もお望みではありません」と注意を呼びかける。午後の一般参賀も急きょ1回増されて、すでに計6回行っていたという。

 千葉県から10歳の娘と訪れたという女性は、「12時には到着しましたが入れなくて。思いがけずお姿を見ることができて本当に嬉しい」と声を弾ませる。

 参賀者が頭上にスマホをかかげて待つこと10分。

「おめとうございます」「天皇陛下 30年ありがとうございました」

 天皇陛下と皇太子ご夫妻、秋篠宮ご夫妻と眞子さま佳子さまが宮殿のベランダに姿を見せると、参賀者の声が飛び交った。

 陛下がマイクに向かい、語りかけた。

「新年おめでとう。天候に恵まれ、このように皆さんとともに、新年を祝いことを誠に喜ばしく思います。本年が少しでも多くの人々にとり、良い年となるよう願っています。年頭にあたり、我が国と世界の人々の安寧と幸せを祈ります」

 日没が近づく時刻なだけに、午前中の「晴れ渡った空のもと」というあいさつが、「天候に恵まれ」と変わっていた。

 皇居に入れずあふれた参賀者が大勢いると知り、天皇陛下は急きょ、一般参賀の回数を2回も増やした。そして、時刻に合わせてあいさつの言葉も微調整する。最後まで、国民とのふれあいを大切にする、天皇陛下らしい、温かな心遣いに溢れた一般参賀だった。

 都内在住の82歳の男性は、「20年以上毎年訪れていましたが、来るのは今年で最後です。いい思い出になりました」と、声をつまらせ東京駅へ向かっていった。(本誌・永井貴子)

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