警察が両検査を行う仮設テントを超えてもまだ、皇居には入れない。番号別にロープで仕切られた皇居前広場の待機列で再び待機。皇居前広場から皇居正門まで続く長蛇の列は、ほとんど動かない。待機者は、いちようにスマホで時間を潰しているが、皇居は携帯電話の電波が繋がりにくい。しょっちゅうスマホのネット画面が停止するのがツラいところである。

 ここまででの所要時間170分。ついに、一般参賀の最後の回も、始まってしまった。

 周囲を見渡すと「皇居・一般参賀ツアー」か何かの客なのか、緑の旗をもった添乗員と団体客の姿も。隣では、青森から来たという高齢男性と娘らしき年配女性が、「記帳は出来るんだろうか」と不安顔で顔を見合わせ、親に手を引かれた幼児もけなげに耐えている。

 数時間立ちっぱなしで、身動きが取れないが、人混みのため温かいのが唯一の救いか。

 3時15分。ようやく、お濠にかかる正門石橋を渡り皇居・正門をくぐるところまで進んだ。宮殿に続く二重橋から、皇居前広場を眺めると、広場はまだ長蛇の列が渦巻いていた。

 宮殿の東庭に到着すると、あちこちで警察官が「天皇陛下の一般参賀は終わっています。記帳もできません~」と叫んでいる。

 3時間並んで記帳すらできない、というまさかの「宮殿素通りコース決定」。

 参賀者から、「ハハハ……」と疲労感の混じった苦笑いが漏れるが、それでもみんな、宮殿前から動こうとしない。

 さっきまで行われていた天皇陛下と皇族方によるお手ふりの録画映像が、東庭に設置された2台の大型モニターに映っている。せめてその光景だけでも、とでもいうように、とスマホでパシャパシャ撮影する音が止まらない。そして宮殿前の東庭は、あとから押し寄せる参賀者で、すし詰め状態である。警察の誘導でようやく一部の参賀者が出口の坂下門に向かって歩き始めたとき、奇跡のアナウンスが入った。

「4時頃に、天皇陛下のお出ましがあります」

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陛下の言葉とは?