金融業界では巨大なネットワークがある。会員1200人のファイナンス稲門会だ。人気は会の運営委員である大企業役員などを囲んでの食事会で、例えば昼食1200円、夕食6千円。他の稲門会を交えた名刺交換会も盛んで、毎回100人以上の参加がある。

「運営委員の推薦をもらい、転職した会員もいる。知り合った2人が香港でおむすび専門店を開業し、成功した例もある」(阿部多恵副代表幹事)

 現役生支援の動きも活発になっている。

 応援部稲門会幹事長の生駒健一郎さんには就活中の現役部員からこんなメールが舞い込んでくる。

「商社の卒業生を紹介してもらえませんでしょうか」

 生駒さんは卒業生名簿の電子ファイルを開き、商社に勤める卒業生を探し、連絡する。卒業生がいない場合は、他の稲門会をたどる。

「個人情報の取り扱いが厳しく、卒業生情報の入手も難しくなったことで、部員が就職活動に苦労していると聞き、支援に乗り出しました」(生駒さん)

 12年から組織的に就職支援に取り組み、1200人の会員のうち90人が主体的に支援に関わる。今年から現役世代と近い年齢のOBを窓口に置き、部員が相談しやすい環境を整えた。

 支援はまさに手取り足取りだ。夏に3年生部員を対象に参加必須の就活ガイダンスを開催し、各企業で働く卒業生を招き、業界や企業の説明会などを月に1回開く。卒業生の紹介だけでなく、エントリーシートの添削まで引き受ける。

「支援前は就活の実績が厳しいと感じましたが、最近はエントリーシートの通過率も上がり、マスコミ、商社など大手企業の内定もかなり増えました」(同)

 応援部チアリーダーズの鈴木凜さんは、第1志望のマスコミから内定をもらった。毎回出欠を取る講義は休めない。土日は部活動の応援参加で、就活に時間を割くことすら難しかったが、こう振り返る。

「説明会では本音の話を聞け、OB訪問では具体的なアドバイスがもらえ、効率が良かった。自信をもって面接に臨めた」

 大学のキャリアセンターはIT業界や旅行業界、ホテル業界などの稲門会と就職セミナーを開くなど連携を強めている。稲門女性ネットワークもその一つだ。

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